新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

サムスンが挑む50年前の事件

 シリーズ第5作で著しい成長を見せたインディアナポリスの中年私立探偵アルバート・サムスンについては、しばらく前に紹介した。


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 前々作では破産状態だった彼だが、ようやく普通の暮らしを取り戻し、事件解決にも冴えを見せていた。それが本書では金に糸目は付けないという依頼人が登場し、「クリスマスを前に新しいコートを買おうか」などと悦に入っている。まあ、インディアナポリスという街も寒そうではある。
 
 裕福な銀行家ダフラス・ベルターが、今回の依頼人。20年以上連れ添った妻ポーラと初めての海外旅行に出かけようとしてパスポートを申請すると、ポーラの出生証明書が偽造だとされてしまった。僕らには考えにくいことだが、米国人は立派なビジネスマンでも、パスポートを持っていないことが多い。ベルター夫妻も50歳ほどになって留学中の息子を訪ねるために、初めてパスポート申請をしている。
 
 サムスンはポーラの出生を調べていくうちに、彼女の母親が実母ではないこと、出生地とされる建物は売春宿だったこと、そこに暮らしていたのが若いクラブ歌手だったことを突き止める。
 
 クラブ歌手デイジーは田舎からでてきて出産、子供を知りあいに預けてステージに立ち、富豪の道楽息子に見初められて結婚。子供がいることは伏せたままで、やがて養女にだしたらしい。彼女の結婚は異常性格の夫のせいで破綻、彼女は夫を射殺してしまい裁判に掛けられるが無罪となった。その後、彼女は行方をくらましている。
 
 サムスンが調査を進めるうち、認知症で入院していた「母親」が急死する。サムスンは知りあいのパウダー警部補に検死を依頼、殺人だったことがわかる。サムスンは、50年前と現在の2つの殺人事件の謎に挑むことになる。
 
 マイクル・Z・リューインの諸作は、どんどん面白くなっていきます。しかしサムスンシリーズはあと1作「豹の呼ぶ声」が残っているだけで、これがまだ手に入りません。ただパウダー警部補が主人公の3部作は買ってあります。次はそれらを読んでみましょう。