新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

不器用なドイツ人

 ドイツ好きの僕たち夫婦、この数年平均年一度はドイツ旅行をしている。アパートメントの部屋や列車の中、ショッピングセンターにも面白メカは一杯ある。最初にドイツに仕事で滞在していたころ、窓の開け方を見てびっくりした。レバーが下に向いていると閉まっていることはわかる。レバーを90度廻すと、普通に開く。ここまでは問題ない。しかしさらに上に、最初の位置から180度廻しレバーを上に向けると、手前に10度ほど傾いて開くのだ。

 
 これは出入りのためではなく、換気のためである。網戸などというものに遭遇しないこの国では、虫よけの意味もあったのだろうか。しかし左辺(右辺)と下辺をそれぞれ軸にして動く窓などというものを見て、ドイツのメカニズムはすごいなと思ったものだ。

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 ふとBook-offで手に取った本書、筆者の佐貫亦男は航空技術者である。陸軍の97式戦闘機の設計者でもあり、第二次世界大戦中の大半をドイツで過ごした。戦後は東大・日大で教鞭をとる一方いくつかの航空関係の著書やエッセイ、旅行記などを残した。無類のドイツカメラ好きとしても知られた人らしい。
 
 冒頭、ドイツの道具が使い勝手に優れているのはドイツ人が不器用だからだとある。確かに僕の知っているドイツ人には、手先が器用なヤツなど一人もいない。彼らは不器用さをカバーするため、「匠の技」を使っていい道具を作ったのだと本書にある。
 
 本書は1985年の発表で、ここに紹介されている道具・インテリア・設備などもデジタル技術が使われているものはほぼない。だがドイツ人は保守的なので、現代のドイツに慣れた僕たちでもあまり違和感はない。唯一の例外は、カメラである。本書ではライカについての記述が多いが、すでにその名前は「伝説」と化している。スマートフォンのカメラさえ、かつての有名なカメラの画質を上回っているし、機能ではケタ違いになっているからだ。
 
 やたらと細かな仕掛けのあるドイツの道具たち、主にメカニカルなものなので陳腐にもならなければ故障が治らないようなことも少ない。また今度訪ねた時に、注意してみるようにしましょう。