新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

理系探偵シャンディ教授

 東野圭吾の「ガリレオ」シリーズではないが、名探偵には理系の大学教授/准教授が少なくない。科学捜査の役に立つ知識を持っていることもあるし、直接的に鑑識や検視の役割を担うこともあるからだ。シャーロット・マクラウドはカナダ生まれ、東海岸育ちの作家。ボストンに近い町に住み、そのあたりを舞台にした作品が多い。本書は彼女のミステリー第三作、やはりボストン近郊の町バラクラヴァ(架空の町かどうかはわからない)の農業大学での連続殺人事件を描いたものだ。

 
 主人公の探偵役ピーター・シャンディ教授は応用土壌学の教授。今でいうアラフィフだが独身、大学関係者ばかりの居住区に一人で住んでいる。バラクラヴァ農業大学とその町の特徴は、派手なクリスマス飾りとバカ騒ぎ。これを嫌ったシャンディ教授が短いクルーズ旅行に出て帰ってくると、自宅には教授仲間の奥さんジェマイマの死体が転がっていた。

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 登場人物はかなりデフォルメされたキャラで、ジェマイマなどは悪魔も同然の女丈夫に描かれている。そんな女を殴り殺せる者などいないと、事故死説が有力になるのだが、シャンディ教授は床に散らばっていたビー玉からこれが殺人事件だと見抜く。とはいえ捜査権も何もない一介の教授では、綿密な捜査などできない。しかし今度は大学の監査役が毒殺される事件が起きる。応用土壌学の権威でありシャンディ教授は、またも死体の第一発見者となるのだが今度は正確に死因を見抜いていた。
 
 事件は大学の創始者であるバラクラヴァ家の蔵書横流しも含めて複雑にからみあってくるが、シャンディ教授は西海岸からやってきた司書ヘレンの助けも借りて、真相に迫っていく・・・と書くと格好がいいのだが実際は飲んだくれながらキャンパス内を嗅ぎまわっている程度である。
 
 ヘレンとシャンディ教授の大人の恋が進展するさまを挟みながら、真犯人を追いつめるプロセスが進むのだが、ある意味なんとも冗長。ちりばめられている古い文学的表現は、脚注はあるものの日本人にはわかりにくい。ただ登場人物同士の軽妙なやりとりは面白く、ドタバタ劇(笑劇)のような品の悪さもありません。これがアメリカンテイストのユーモアミステリーなのかもと思いました。