新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

京都・華道・キャサリン嬢

 山村美沙のレギュラー探偵、キャサリンターナーのデビュー作が本書(1975年発表)。20歳のコロンビア大学三年生、金髪美女で米国副大統領の娘というVIPだ。日本のミステリーで外国人を探偵役に据えたケースは多くない。作風の広い都築道夫のキリオン・スレイくらいだろうか。このシリーズはパロディの類だが、キャサリンものは本格ミステリー、TVの2時間ドラマシリーズにもなった。(外国人の探偵役は起用できず、かたせ梨乃だったけど)

 

 来日した日本通のキャサリンは、以前ニューヨークの華道展で会った東流のマイコに私淑しようとするのだが、マイコになかなか連絡が取れない。大臣である叔父の依頼でエスコート役になった浜口青年がようやく見つけてくれたが、「忙しい」と振り切られてしまう。その後、マイコは京都で毒殺死体となって発見される。マイコ周辺には華道の流派(東流・京流・新流が三大会派とある)の覇権争いや、流派内の跡目争いが絡んでいるらしい。

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 マイコの事件を担当する京都府警の狩矢警部は、日曜日ごとに京都の堀川沿いで大小の事件が起きていることに気づく。そしてマイコの事件から2週間後、京流の家元が茶室で殺された。茶室は日本家屋だがふすまや戸口には掛け金が掛かり、茶室周りの地面は雪で覆われ犯人が出入りした足跡がないという二重の密室である。

 

 さらに東流の家元が誘拐され、後日キャンピングカーの中で刺殺体となって見つかる。事件は華道界をゆるがす連続殺人事件となってきた・・・。本書は山村美紗の作品としては二作目にあたる。豊富なトリックを駆使した作風は、もうこのころ固まっていたようだ。確かに2つのメイントリックは面白いのだが、事件が次々に起きて読者の腰が定まらない。事件をじっくり追いかけるサスペンスには欠けるように思った。

 

 メイントリックの一つは解けて、もう一つは間違えた。トリック短編の長いものと考えればいいのかもしれない。山村作品、もっと探しますよ。