新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

WWWAのトラブルコンサルタント

 SFはあまり読まない僕だし、ましてやスペースオペラというジャンルは全くといっていいほど読んでいない。E・E・スミスのレンズマンシリーズなど、手に取ったこともない。それでも、このシリーズだけは読んでいた。高千穂遥ダーティペアシリーズ。「S-Fマガジン」に最初の短編が載ったのが、1979年。長編7作、外伝1作、より子供っぽいFLASHシリーズが3作ある。見てはいないが、アニメ化されて放映されたこともある。本書は長編の5作目で、2004年の発表である。


        f:id:nicky-akira:20190424203047p:plain

 
 時代は22世紀、銀河連合のWWWA(World Welfare Works Association)のトラブルコンサルタントであるケイとユリ、二人のペットのムギが主人公。全編の語り手はケイ、ボーイッシュな赤毛の美女だと(本人が)いう。ユリは黒髪のぶりっ子、だけど性格も口も悪いと(ケイが)いう。
 
 二人は犯罪トラブルコンサルタントとして、問題の発生した惑星に派遣される。事件は単なる犯罪のレベルを超え、大きな陰謀が隠されていた。従って、惑星を揺るがす大騒動になるわけだ。最初は大人しく捜査している二人だが、そのうちじれてきて「うっさい」とか「ざけんじゃないわ」と叫んでヒートガンをぶっぱなすことになる。
 
 事件後、その惑星の少女から彼女たちに届いた手紙には、「皆さんのおかげで悪い人たちはいなくなりました。しかしいい人たちもいなくなりました。というより惑星そのものがなくなってしまったのです」と書いてある。コードネーム「ラブリーエンジェル」の二人が、陰では「ダーティペア」と呼ばれるゆえんである。
 
 確かに戦闘能力の高い二人だが、惑星全体にはびこる陰謀に立ち向かえるほどではない。都合のいいことに陰謀側の裏切者や抵抗組織などが出てきて助けてくれるのだが、もうひとつペットのムギのことを忘れてはいけない。ヴァン・ヴォークトの「宇宙船ビーグル号の冒険」に出てくる黒豹に似た宇宙生物クァールの類で、真空も生きることができ電波や電流を操り超鋼金属も引き裂くことができる。ムギの助けなしには二人は事件の解決(惑星の破壊も?)をすることはできなかっただろう。
 
 20年ぶりに読んで、相変わらずハチャメチャだけどまあこんなもんかなという印象もあります。もうこれは理屈じゃないですね。たまにはこういう肩に力の入らないものもいいですね。