先日デビュー作「暗闇の終わり」を紹介した、キース・ピータースンの第二作が本書(1988年発表)。前作同様、「ニューヨーク・スター紙」の中年事件記者ジョン・ウェルズが主人公である。前作はニューヨーク北部の田舎町で起きた怪奇な連続自殺事件だったが、今回は本拠地のマンハッタンに戻りウェルズは前作以上の難題に挑む。
特ダネをものにして同僚と呑みに出掛けたウェルズは、馴染みの酒場で古い記者仲間たちに会う。ひとりは通信社の支局長、もうひとりは雑誌の編集長になっていた。そこで彼らに紹介されたのが、アフガン帰りの海外通信員コルト。この3人は10年ほど前アフリカ某国での内戦の取材をしていた仲間だったという。コルトとウェルズは似たもの同士、意気投合して呑むのだが酒場にふらりと入ってきた男の顔を見て、コルトは「死んだはずだ」と驚く。
男が消えてからも2人は呑み続け、ついにはコルトのホテルの部屋で一緒に朝まで呑んでしまった。そこにルームサービスがやってきたのだが、ボーイ姿の男は殺し屋でコルトを刺殺した後ウェルズにも襲い掛かってきた。
ホテルの警備員に危急を救われたウェルズは、コルトの死の背景を探り始める。コルトは危険な国ばかりを取材する通信員なのだが、10年前の某国では本当に命の危険にさらされていた。そこではエミリアという若い英国人宣教師が、政府軍・反政府勢力・難民などの差別なく救難活動をしていて、酒場に居合わせた3人のジャーナリストともう一人の英国人が取材を兼ねて彼女を支援していたのだ。
調べてみると英国人は現地で死に、エミリアも行方不明のままだ。ウェルズは調査の途中で何度か襲われるが、なんとか逃げ延びる。ついに彼の前に「死んだはずの男」ポールが現れるのだが・・・。
アフリカ某国の男ポールは、世界各国で指名手配・死刑を含む有罪判決を受けている。脱獄経験も豊富で、ウェルズの目の前でも警官の包囲網を潜り抜けて見せる。しかし本編一番の「活躍」はウェルズ自身のアクションである。殺し屋と数度にわたり死闘(いつもウェルズは素手)を繰り返し、悪徳警官とも争って痛手を負い、最後はマンハッタンを駆け回って恋人の命を救おうとする。
オカルティックな前作と異なり、アクションが目立つ第二作。しかしいずれも些細なことから真犯人を暴くウェルズの推理が冴えている。容疑者が少ない中で、伏線の張り方が巧妙ですね。このシリーズはあと2冊、楽しみです。