新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

技術者視点での戦車の優劣

 三野正洋という人は大学教員(工学部)が本職だが、数多くの戦争関連著作がある。いずれも工学研究者らしい、エンジニアリング視点に立ったものだ。そこに示される冷徹な数値は、「無敵皇軍」とか「撃ちてし止まん」などという感情論とは無縁のものだ。

 

 本書はその特徴を十二分に表したもので、第二次世界大戦までのその後に分けて各国の戦車につき、各種のデータから攻撃力・機動力・防御力・総合戦闘指数などをはじきだしている。昨年、その一例として「T34/85 vs. M-4」をのデータを紹介しているが、ここではもっと多くの比較を示したい。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/12/29/140000

 

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 第二次世界大戦までの戦車を比較したところ、最も優れていたのはソビエト連邦のものだった。スターリンは戦車のあるべき姿をよく知っていて、ある程度数を揃えられることを優先したのだが、個々の戦車の能力も非常に高い。総合戦闘力として

 

 ・T34/76 100

 ・T34/85 318

 ・Js-Ⅲ 223

 

 となっている。次点はドイツで、大戦初期から複数の戦車を連携させるなど運用面での工夫が見られた。しかし後期には無謀な100トン戦車を企画するなど無理が目立つ。

 

 ・Ⅲ号戦車L型 37

 ・Ⅳ号戦車G型 53

 ・Ⅴ号戦車(パンテル) 196

 ・Ⅵ号Ⅰ型(ティーゲル) 83

 ・Ⅵ号Ⅱ型 160

 

 これらに比べると、米軍は見劣りする。

 

 ・M-4シャーマン 26

 ・M-26パーシング 121

 

 英国もひどいもので、チャーチル(18)、マチルダ(7)。これでは北アフリカロンメルにさんざん叩かれたのも無理はない。イタリアのM13・40(13)も問題にならない。日本はというと、大戦後期に投入された一式中戦車(34)がなんとか評価できる程度。

 

 最後に生産効果比という数値も書いてあって、これはどの戦車を生産したら戦闘力が高くなるかを示している。ここでもT34/85(278)が首位、以下JS-Ⅲ(136)、Ⅴ号パンテル(102)、T34/76(100)、M-26パーシング(81)と続く。この種の評価は、戦艦や戦闘機についてもしたいと巻末にあります。期待して探してみましょう。