新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

NOと言わせる日本

 このところ国際情勢がとてもキナ臭くなってきて、ひょっとすると第三次世界大戦でも起きないかと心配の日々である。一昨日「海洋国家日本」を目指すためのヒントを軍事評論家の書で紹介したが、憲法9条改正にしても敵基地攻撃能力にしても一朝一夕で出来るものではない。本書のタイトルにあるように「国家の命運」を握っているのは、

 

・軍事力

・経済力

・外交力

 

 だと思う。本書には、その最後のもの「外交力」を高めるヒントが詰まっている。著者は民主党政権時代に外務事務次官を務めた人で、最近はTVのニュース番組でも解説をしておられる。40年以上外務省勤務だったのだが、外務省にもいろいろな仕事(情報収集・経済協力・邦人保護・条約の精査・広報等)があるのに、ずっと外交交渉ばかりしてきたという。交渉のコツが紹介してあって、

 

1)ウソをつかず、欺かない。

2)必要なこととある程度融通の利くことに、目標の優先順位を分ける。

3)実現できないこと、譲れないことははっきりそう伝える。

 

 なのだそうだ。これはビジネス交渉でも全く同じことだ。

 

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 外交交渉というと、日米貿易摩擦が日本人には思い出される。「NOと言える日本」という書を生んだように、日本側が譲歩ばかりしていたと庶民は思っている。しかし、その時日本側が米国に要求したことが書いてあって、

 

1)市民の貯蓄不足

2)企業の投資が怠慢

3)企業の行動が近視眼的

4)国際貿易を阻害する政府規制

5)研究・開発努力の不足

6)輸出振興努力の不足

7)労働力の訓練不足

 

 によって、日米間の貿易不均衡が生まれているとの主張だ。30年は前の話だが、このほとんどは今の日本社会/日本企業に当てはまるような気がして、ちょっと悩んだ。米国病と当時言われたが、今は「日本病」になっているのではなかろうか?

 

 本書は数多くの事例をもって、オフェンシブな外交をしなくてはならないし、著者はそうしてきたと説明している。もちろん交渉は100対0になることなどなく、51対49でも勝ちは勝ち。外交の世界では日本も専守防衛ではないということ。日本から要求を突き付けて相手に一旦「NO」と言わせるくらいでないといけない。そのためには外交官だけでなく、日本社会全体が研鑽を積む必要がある。

 

 デジタル通商で、僕自身も中国に「Free Flows of DATA」を突き付け「NO」と言わせた事があります。これからの交渉に向けて、本書は勉強になりました。