新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

横浜・京都・塩釜を結ぶ道

 本書も津村秀介のアリバイ崩しもの、ルポライター浦上伸介が容疑者のアリバイを実際にその街に出掛けその列車や飛行機に乗って検証するストーリー。いわゆる「トラベルミステリー」なのだが、風光明媚な地を巡りながらもどちらかと言えば「鉄道ヲタク」的な味のあるシリーズである。

 

 酒好き将棋好きの伸介と先輩格の谷田実憲、今回は二人で三連休を利用した京都見物。そこで、横浜の将棋クラブの14人がツアーできているのに遭遇する。この14人も酒好き将棋好き、観光そっちのけでビールやコップ酒を呑みながら、マグネット式の将棋盤を開いている。

 

 ところがこの3泊4日のツアー、彼らが新横浜から「ひかり号」で京都にやってきた日に、それより1本早い臨時「ひかり号」で刺殺死体が発見される。またツアーが京都から横浜に帰る日の未明、塩釜でもう一人が刺殺された。いずれもナイフで一突き、現場近くでは凶器と高価な皮手袋が捨てられていた。しかも被害者は同い年で本籍が京都という共通点を持っていた。

 

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 事件を担当する大阪府警宮城県警は、この共通点に気付かず個別に調査するのだが数日たって「毎朝日報」横浜支社の谷田のところに妙な電話が・・・。

 

 「2人の被害者は俺の高校時代の同期生だ。俺ももう一人の仲間も殺されるかもしれない」

 

 という。谷田はこの男に会い、4人が過去にすでに時効になった犯罪を犯した仲間であることを聞き出す。事件発覚を恐れた4人は京都を離れ、別々に隠れ住んでいたのだが数カ月前に横浜で会っているという。谷田と同行した伸介の2人は、その「もう一人の仲間」が犯人ではないかと疑うのだが、彼には鉄壁のアリバイがあった。

 

 何しろ冒頭出てきた14人のツアーの添乗をしていて、

 

・最初の殺人の時は、1本後のひかり号に乗っていて、14人の証人がいる。

・二番目の事件の日は前夜にツアーのホテル(京都)のバーで飲んでいた。

 

 というもの。大阪府警宮城県警を横浜に読んだ谷田の友人で神奈川県警の淡路警部も手が出せなくなる。そこで、本格的に伸介の登場になるのだが・・・。

 

 正直、この謎は解けました。3つのトリックがあって、いずれも旅慣れた人間でないと気が付かないかもしれません。これで、伸介クンと肩を並べて歩けるかもしれません。ぼくもお酒好きですから、今夜は少し多めに呑ませてもらいましょう。