新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

核兵器テロを阻止せよ

 「COVID-19」のおかげで米国出張が無くなってしまったからいいのだが、米国の航空事情は決して安全ではない。複雑な手荷物検査や激しいボディチェックをするし、保安員の教育水準も高くないように見える。そんな漠然とした不安感を、すっきり証明してくれたのが本書(2016年発表)。

 

 主人公のケネディは、9・11で当時16歳の妹を亡くした航空保安警備のコンサルタント。米国各地の航空管理会社を巡り、従業員研修の講師や安全評価、改善提案をするのが仕事だ。国土安全保障省の要員が偽物のテロ物件(銃火器や爆発物)を機内に持ち込む抜き打ちテストをしたところ、そのうち95%が保安検査所をすり抜けてしまった(2015年調査)という。例えばJFK空港では、現職保安要員のうち70人以上がテロリストの疑いがあるとも伝えられる。保安要員が乗客の荷物などを盗んだ容疑で解雇されたケースも10年間で380人を超えているし、国土安全保障省の要員が銃や身分証、携帯電話など悪用されたら重大な事態を招くものを紛失したのも年間500件にのぼるという。

 

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 ケネディはそんな事情を改善しようと、年間200日以上を機上か空港のホテルで寝ている。各空港には仲のいい友達もいるが、目の敵にしてくる(不良)保安員もいる。そんな彼にCIAが接近して、対テロ組織<レッドカーペット>の前線指揮官をやってくれないかという。国際的なテロリストであるレンツが、米国航空網を狙う9・11以上のテロを企画しているらしい。

 

 対処要員として、航空技術者・ハッカー・元シールズ・兵器の専門家などが集められた。しかし全員が個性的で協調性はゼロ、その能力は危険な領域に達している。ノーマルな感覚の持ち主で、かつ航空業界に詳しい指揮官が必要だったのだ。

 

 ケネディたちは全国の主要の空港に監視装置を取り付け、レンツ一味の動きも探る。どうもレンツは、ロシアから小型核兵器「RA-115」25個を買い付けたらしい。スーツケースに収まり、ヒロシマ型の70%の破壊力がある。レンツを阻止しようとするケネディたちだが、レンツの側からも<レッドカーペット>に攻撃をかけてきた。

 

 作者のシェイン・クーンツは映画畑の出身、本書も映画のようにシーンがめまぐるしく変わりダイナミックな展開を見せる。才能ある作家と思いますが、他の作品が翻訳されたとも聞きません。探してみることにしますが・・・。