種村直樹という人は、有名なレイルウェイライターである。新幹線、ローカル特急、寝台列車やフェリーなど動くものならなんでも乗り、駅弁や駅そば、地方の名産品などなんでも食べてたくさんの紀行文を書いた。以前紹介した宮脇俊三と比べると、より一般の利用者(マニアの初心者)から楽しめる作品群ではあるが、宮脇作品の方が品があったかなとも思う。
札幌の女子大生87人を乗せたチャーター列車「レジャーエクスプレス」がハイジャックされた。五稜郭から函館で青函連絡船に乗り、青森経由弘前でリンゴ狩りをする予定だったが、予定された連絡線に乗る前に誘拐されたらしい。犯人グループからは、JR北海道と東日本に4点の要求が付きつけられる。
・身代金、5億円
・青函連絡船の存続
・リニアモーターカーの研究データ提供
・犯人全員の安全保障
行方不明だった列車が、三陸鉄道リアス線で発見される。犯人グループは函館付近の貨物線から列車を別の船に乗せ、八戸港に揚げて久慈線経由で南下しているのだ。この後、小牛田から東北本線に入った列車は、磐越西線経由会津鉄道、野岩鉄道を通って東武線に入ってくる。このあたり、相当の鉄道知識がないと書けないルートである。
犯人グループは国鉄からJRに移されなかった不満分子や、青函連絡船の乗員に加えて、何らかの過激な勢力が加わっているようだ。鉄道警察も知恵を絞って首都圏入りを阻止しようとし、執拗に南下を企てる犯人側と鉄道パズル/ゲームのような戦いを繰り広げる。