米国を赤と青に分断した大統領選挙も、一応の決着をみた。しかし分断は終わっていない。上院・下院選挙では共和党が善戦したため、バイデン次期大統領は難しい政権運営を迫られるだろう。米国国民は、トランプ先生のもう4年は困るが、民主党にも期待できないという「民意」を示したのかもしれない。
「民意」を直接図る米国の大統領選挙と違い、日本や日本がモデルとした英国は「議員内閣制度」を取っている。最高権力者は、間接選挙で選ばれるわけだ。しかしその日英で、国民・市民投票が起っているのがこの10年間である。日本では2度「大阪都構想」の市民投票があり、英国では、
があった。特に最後のものについては、日本国民もその結果に息を呑んだ。本書は第二次世界大戦後の英国政界をなぞりながら、民主主義のモデルとされた英国の制度が瓦解してゆくさまを解説している。
そもそも英国の政治体制は、非常に強い「議会主権」しかも下院(かつての庶民院)が上院(かつての貴族院)に優越することが基本にある。これを支えるのが、
・小選挙区制
・二大政党制
・政党の一体性
・単一国家
などである。小選挙区制なので小さな政党は議席を得にくい。自然に二大政党制になるのだが、それは政党内である程度の一体性がないと有名無実になる。それにそもそも英国は、イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの連合王国で単一国家ではない。
二大政党たる保守党と労働党内の一体性が失われ、政党の離合集散が起きるようになって上記の結束がゆるんできた。例えば2015年総選挙の結果は、政党名・議席数・得票率は、
・保守党 331議席 36.9%
・英国独立党 1議席 12.6%
とひどいねじれを産んでいる。得票率と議席数が比例しないので「民意」を汲めなくなってきたのだ。そこで上記のように国民・住民投票を多用せざるを得なくなる。筆者は英国はもはや「民主主義のモデル」ではないと断じているが、ならば民主主義を我々はどう考えるべきか?考えさせられる書でした。