新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

拡大するスペンサー一家

 本書(2005年発表)は、ロバート・B・パーカーの「スペンサーもの」の後期の作品。今回スペンサーは、ボストン郊外の(多分富裕層の子弟向けの)高校で起きた銃乱射事件の被告の少年を救う仕事を引き受ける。スキーマスクを被った2人の男が4丁の拳銃を撃ちまくり教師を含む6名が死亡、9名が負傷した事件だ。一人が現行犯で逮捕され逃げていたもう一人も容疑者の自供で名前が割れて逮捕された。

 

 恋人のスーザンが精神病理学の学会に出かけていて不在、愛犬パールと暮らすスペンサーのもとに逃亡して逮捕されたジェレド青年の祖母がやってくる。共犯の同級生が名指ししていて、のちにジェレドも自白してるのだが、資産家の祖母は無罪を信じている。

 

 マサチューセッツ州に死刑はないのだが、有罪になれば終身刑は確実。しかし祖母以外学校関係者も両親すらも、事件の幕引きを早くしたいとしていて弁護士も熱心ではない。暗黒街につながりもなく、銃器の経験もない2人の高校生が、4丁の拳銃を入手し35発撃って2/3を人に命中させたことにスペンサーは疑問を持つ。

 

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 暗黒街を探るためスペンサーが頼ったのは、以前ホークと二人で対決したメイジャーという黒人ギャング。下記の作品ではまだ10歳代だったはずだが、本書では30歳になっている。もう12年も経ったのかと驚いたが、スペンサーもスーザンもなぜか年をとらないで活躍を続けている。

 

https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2019/09/05/000000

 

 本書にはホークも登場しないので、ホークの代わりはかつての仇敵メイジャーということらしい。もう一人、敏腕弁護士のリタ・フィオーレにも、スペンサーは手伝いを求める。彼女は高校生たち2人の弁護士や検察官を(その実力評価も含めて)スペンサーに伝えるだけでなく、最後には事件の弁護役の引き受ける。

 

 スペンサーものは、数ページの短い章で事件の進展とスペンサー&スーザンの「愛の巣」が描かれるのだが、本書でははじめのうちスペンサーは愛犬パールを相手に独り言を言ったりしている。そのうちにリタをディナーに誘ったりする。

 

 スペンサーものは、やっぱりスーザン&ホークがいないと締まらないのですが、リタやメイジャーも加わって「一家」が拡大してきているような気がします。