新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

困った隣人への対処を学ぶ

 「COVID-19」の影響は最小限に食い止めたはずなのに、GDP2位の国とも思えぬ所業が目立つ中国。尖閣諸島沖での違法操業や台湾海峡で空母をデモンストレーションするなどは、まだかわいい方だ。昨年末には、全体的な国家安全保障の枠組みを構築するとして、重点10項目を挙げている。これらは国内外からの「一党体制批判」すらも、敵対行為とみなすほど過激なものだ。

 

 そんなとき、ふと目について買ってきたのが本書(2011年発表)。著者の古田茂美さんは香港貿易発展局首席代表、中国人との交渉経験豊かな人だ。まだ中国が貧しかったころから、外国企業と中国企業の諍いは絶えない。その原因の多くを、筆者は「ビジネス感覚の違い」だという。

 

 中国人にとって「身内」と「外人」は分けるべきもので、身内には儒教精神で対峙し、外人には兵法(36計)を使うのが普通というのだ。だから外人たる日本人(企業)は、中国人(企業)に対峙するとき、「兵法」を理解しておくべきとある。本書には36の「計(はかりごと)」の解説に加えて、ビジネス界で起きた実例も紹介されている。この「計」は、長い戦乱・侵略の時代にあって中国人が体得した、無用な闘いを避けながら勝つためのものである。

 

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 現代日本人が知るべきこととしては、中国人が意識して、

 

・ビジネスは戦争と考える。

儒教的価値を守るためにも戦いが必要。

・「Win-Win」でなく「Win-Lose」を目指す。

・商人は人をだますものだ。

・熾烈な権力闘争の中で生き残る必要がある。

 

 を自らの頭の中で繰り返しているということ。近代になってからも、毛沢東が「兵法」を良く使い、官僚(共産党)教育にも使われているからだ。

 

 従って本書に挙げられた例では、日本人は「騙された」と怒っても、中国人は「当然のことをしただけ」と罪に意識などない。これは何千年にわたって身に沁みついたものなので、直接的な対処は難しいと本書にある。それは、かの国が豊かになった今でもおなじことだ。本件に関しては「衣食足りて礼節を知る」ことはないという。

 

 冒頭紹介したように習大人からして好戦的に見えているのも、ひょっとしたら「計」かもしれないですね。そのあたりをよく考えながら、今後もお付き合いしていくことになるのでしょう。