新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「大衆創業・万衆創新」の国

 2022年発表の本書は、(一財)日中イノベーションセンター主席研究員小池政就氏の中国のイノベーション事情とそれを日本がどう生かすかのレポート。日中協力・連携を進める視点で、いくつかの主張が盛り込まれている。筆者の専門は国際関係、エネルギー、技術経営で、米英の研究機関勤務の他、清華大学で訪問学者だった経験もある。

 

 2018年北京に渡った筆者の経験から、レポートは始まる。古びたアパートで不便な生活を余儀なくされたのだが、スマホのアプリ群を利用するようになって別の北京の街が開けたとある。財布も要らず、スマホQRコードですべてが手に入る。別ブログで紹介した、下記の記事と同様の話だ。

 

中国都市部の今の状況 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

        

 

 このようなイノベーションが続々起きる背景は、国の後押しと日本人は思うかもしれないが、不便な生活を変えたいという自発的なものだという。清華大学はじめ優秀な学生が在学中から起業しているし、それを支援するスキームも整っている。清華大学はそれ自体一つの街の規模(人口7万人)があって、その中でもPOCに類したことも十分できる。

 

 企業の成功確率は5%ほどだが、日本人なら「そんなに少ない。失敗したくない」と思うところ、彼らは「5%も成功できる。失敗しても何度もやり直せる」と思うらしい。その結果「大衆創業・万衆創新」と言う言葉が、北京で流行するようになった。

 

 日本の輸出入量でTOPを占めるのが中国だが、日本人の対中感情は低迷・下降している。一方普通の中国人は日本にシンパシーを持っていて、政治が対立しようとも関係なく日本が好きだとある。日本はこの隣人と、少なくとも民間ベースでは密接に連携すべしというのが、筆者の主張。

 

 それはわかりますが、本書に取り上げられたイノベーター(例:ジャック・マー)にも当局の圧力がかかるようになりました。連携・・・どうしましょうか?