先月日経平均が30,000円を越え、バブル再来と言う人もいる。確かにこの基準を越えたのは30年前の「バブル期」以来である。そのころ僕は下っ端サラリーマン、周囲で景気のいい話が飛び交う中、戦争ゲームにうつつを抜かし「湾岸戦争」をTVで見て盛り上がっていた。実際には日本経済も(特に大蔵省周辺は)、戦争状態だったのだが。
1989年 リクルート事件
1991年 尾上縫事件*
1992年 佐川急便事件
1995年 2信組事件、大和ニューヨーク支店事件*
1996年 住専事件
(*は本書に取り上げられているもの)
僕が個人的に知っていたのは、大和銀行ニューヨーク支店での巨額損失事件だ。大和の日本人トレーダーが相場で巨額損失をし、それを他の資産で穴埋めしていた。損失額は1,100億ドルと言われ、トレーダーからの告白文を読んだ頭取は大蔵省への配慮のあまり米国当局への報告を遅らせる。これが大和銀行とその背後にいる大蔵省が世界から厳しい目を向けられるきっかけになった。
何故かはわからないが、僕はこのトレーダーの書いた「告白」という本を古書店で買って読んだ。多分銀行さん相手のビジネスが多かったからだろう。お客さんの裏事情を知るのは、ビジネスの要諦である。
日債銀事件では割引信用債権(通称:ワリシン)の信用が下落したが、その前の佐川急便事件で逮捕された金丸信自民党副総裁が資金隠しにワリシンを使っていたことも、日債銀事件の前段にある。
長銀がEIEインターナショナルの高橋社長(当時リゾート王と呼ばれていた)に入れ込んだ資金がもとで、3兆円を越える負債をつかみ破綻するという事件もあった。外資が買い取った長銀は「新生銀行」として生まれ変わる。僕が付き合ったのはその後である。
そこまでは何らかの知識、関係のある事件だったが、本書の冒頭の「尾上縫事件」だけは、名前くらいしか知らなかった。大阪料亭の女将が、興銀その他から2兆8千億円近い借金をしていたというもので、女将には金融知識はなくただ借りた金を他の銀行に預金していたというから驚く。銀行の「貸せ貸せ、どんどん」が行きついた結果である。
いや、当時も金はあるところにはあったんですね。僕には縁がなかったけれど。