新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

政治は熱量、ではどう評価する

 4年ぶりの総選挙が始まろうとしている。本書は2019年の発表で、

 

・元大阪府知事大阪市長、弁護士 橋下徹

・山猫総合研究所代表、国際政治学者 三浦瑠璃氏

 

 が日本の現代政治(&政治家)について対談したもの。橋下弁護士は「維新の会」の創設者で、大阪市大阪府の二重行政を打破しようとし、数々の改革を手掛けたものの「大阪都構想」の住民投票に敗れ、政界を引退している。三浦代表は「朝までナマTV」の常連で、司会の田原氏をたしなめることのできる人。議論は、イデオロギー世論調査・経済の指標・税制・地方分権・対米対中外交・安全保障・憲法改正など広範に及んだ。結論を先に行ってしまえば、

 

 「有権者がちゃんと政治家を見て、選挙に行くこと」

 

 である。これが無ければ日本は良くならないと、両者は一致している。では政治家をどう見るかというと、下記のように3つに分類している。

 

・雄叫び派 やたらめったら決断し、権力を行使したがる。

・きれいごと派 権力の抑制を唱え、結果として問題を先送りする。

・腹黒派 権力を適正に使うため、嘘をつくことも権謀術数をめぐらすこともある。

 

 例えば韓国の文大統領は「雄叫び派」の典型、トランプ先生は「雄叫び」はするけれど通商交渉などでは「腹黒派」に変身するという。

 

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 また問題が起きた時の処理について、政治家の対応は4つあって、南スーダンでの自衛隊が戦闘に巻き込まれたか否かの事例を挙げて説明している。

 

1)戦闘行為はなかった、記載したとされる報告も存在しないと、嘘をつきとおす。

2)「戦闘」の概念を狭く定義し、今回の騒動は「戦闘」レベルではないとする。

3)この程度の騒動で自衛隊を撤収し現地に混乱をもたらしていいのかと反撃する。

4)末端の責任者の首を切ることで、尻尾切りで逃れる。

 

 1)と4)が論外なのはお分かりになろう。

 

 橋下氏は「政治は熱量」だという。確かに数は必要だが、エネルギーは数×熱量で決まる。ゼロから始めた「大阪維新」が、数年でメジャーになれたのは、熱量が大きかったからだと彼は言う。その論からすると、例えば憲法9条改正(彼は必要と思っている)や、外交・安全保障の議論は、一般市民の熱量が感じられないので難しいのだそうだ。

 

 岸田政権では「経済安全保障」が大きなテーマになっています。これが「熱量」をもてるのかどうか、お二人に聞いてみたいですね。