中国共産党政権が露骨な「国進民退政策」を進め、アリババグループなどデジタル産業叩きをしている。欧米諸国だって「COVID-19」対策でバラ撒き政策を実施、それを回収すべく法人税増税を計画中。日本でも10万円再配布の要望が収まらないなど、世界全体が「大きな政府」から「より大きな政府」に向かっている。
大きな政府=小さな国民 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
何度か渡部昇一教授の書を紹介していて、その中に「政府が大きくなれば国民が小さくなる」との記述があり、全面的に賛同したものだった。渡部教授は英語学者で、若くして「知の巨人」と言われたノーベル経済学者ハイエクから薫陶を受けたことから、上記のような考えを持つに至っている。
ハイエクは本名をフリードリッヒ・A・フォン=ハイエクといい、19世紀末のウィーンで下級貴族の家に生まれた。後にイギリスに渡り、20世紀前半の社会主義経済の風潮であるケインズ経済学に反論した学者である。サッチャー首相が就任時にハイエクの書を取り出して「私の理想とする社会」と言ったことで、見直されるようになった。
ケインズ以前の欧米経済は、「神の見えざる手」に代表される市場原理主義で成長してきた。しかし20世紀前半には大恐慌などあり、市場原理主義への不信感がつのった。ケインズは「公共投資によって穴を掘り、埋め戻すだけでも経済効果はある」として、今でいうバラ撒き政策を主張した。古典的な自由経済には限界があるので、政府がその分借金をして意図的に経済を廻すべきと言うことだ。
しかしハイエクらは、自由経済でいいのだが、自由経済が合理的な判断で廻ると思い込んでいることが誤解だと反論した。プレーヤーは全部の情報を持ち総合的に正しい判断をするとは限らない。自律分散的な動きを重ね、より優れたものが生き残る形でいいのだということ。ケインズ的政策運営をした英国は「イギリス病」と呼ばれる危機に陥り、サッチャー改革を待つことになる。
本書(2008年発表)の序文で著者の池田信夫氏(NHK出身の経済学者)は、多くの人がハイエクを見直してもらいたいと本書執筆の動機を語っている。僕自身も渡部教授の書に何度も出てくるハイエクの思想を勉強したかったが、原書を読む気力はないので本書を手に取った次第。インターネット経済は自律分散型勝利の証拠だと著者は言います。うなずける話でした。