新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

サイレントコア、中国民兵との闘い

 尖閣諸島周辺に中国海警局などの船舶が出没し、台湾海峡と共に東シナ海ホットスポットとなっている。この海域をテーマにした軍事スリラーはいくつもあるし、

 

武装漁民が上陸したら手が付けられない。

・中国海軍力の充実は著しく、海上自衛隊では歯が立たない。

 

 などと悲観的なニュースも多い。よくニュースに出てくるのは北小島・南小島の映像だが、尖閣諸島最大の島は魚釣島。周囲11kmのピーナッツ形の島で、平地は全くなく急峻な山岳地形ばかりで山頂は標高360mもある。

 

 2004年発表の本書は、架空戦記・軍事スリラーの著作が多い大石英司の作品。作者の架空戦記によく登場するのが、陸上自衛隊の特殊部隊「サイレントコア」。

 

隊長:音無二佐

第一小隊長:司馬三佐

第二小隊長:大門三佐

 

 らがレギュラーメンバーだ。全員戦術・戦闘のプロだが、中でも司馬三佐は中国系女性で隠密活動や暗闇での戦闘にかけては恐るべき力を発揮する。今回彼/彼女たちが解決を託されるのは、魚釣島をいつの間にか占拠した200名の中国人民兵組織の駆逐。

 

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 半年以上かけて洞窟内に整備した桟橋経由で200名の戦闘員と補給物資などを運び込んだのは、中国の実業家曲。特注の潜水輸送艦を使って、迫撃砲まで運び込んだ。前線指揮官周大佐以下、士官はプロの軍人だが兵卒は簡単な訓練を施しただけの男たち。ただし国威を高めるためと士気は高い。

 

 中国の経済成長が著しく、曲のような富豪が台頭していた。まだ中国政府は「戦狼外交」のスタンスにないものの、市民は充分な自信を持っていて「中国世界一」の意識が高い。そこで「日本鬼子」から尖閣諸島を取り戻す作戦を実行すれば、英雄になれるし中国政府を動かせると曲らは考えたのだ。

 

 不審な動きを察知した海上保安庁の特殊部隊が上陸するが、たちまち多くの死傷者を出して追い返される。出動した司馬小隊は、

 

魚釣島の自然を守れという環境団体

・中国政府を刺激したくない外務省

 

 などに手足を縛られ、苦境に陥る。洞窟内桟橋を占領して補給路は断ったものの、周たちは半年は耐えられる物資を備蓄していた。半年も占拠され宣伝されたら「尖閣は日本の領土」に各国が疑問を抱く。政府は速やかに奪還せよといいながら、艦砲射撃などの重火器攻撃は許さないという。

 

 作者としては日本国民への警告を込めた作品とのこと。その後日本政府もすこしは「尖閣防衛」に力を入れてきました。まだ危機は続いていますがね。