新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

在京6紙のスタンスと新聞の使命

 本書(2014年発表)のサブタイトルにあるように、新聞各紙の報道が二極化している。その傾向は、7年経ってむしろ強まっている。朝日を筆頭に毎日・東京は政権に批判的、読売と産経は政権よりである。本書によると、日経も政権よりのスタンスだとある。当家は日経を取っていて、僕も毎日目を通すのだが、さほど政権よりとは思っていなかった。

 

 本書はこの在京6紙が、第二次安倍政権の初期の頃に、どのようなスタンスで、

 

アベノミクス

集団的自衛権

原発政策

オバマ政権、習政権との対峙

 

 などを伝えたかを精査している。著者徳山喜雄氏は朝日新聞審査室幹事、朝日のスタンスを伝えるというよりは審査室幹事の視点で、6紙の比較をしている。一番特徴的だったのが、2014年4月にオバマ大統領が国賓として来日、

 

・TPPの最終調整

日米安保対象に尖閣諸島を明記

 

 の2点を安倍総理と詰めた時のことである。特に中国を意識した安全保障の合意について各紙は、

 

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朝日新聞

 オバマ大統領の発言は日本側の期待とズレがあり、日本と中国は信頼醸成措置を取るべき。

 

毎日新聞

 中国・韓国との信頼醸成ができない中で、集団的自衛権の行使容認に突き進もうとしている。

 

東京新聞

 米国大統領の支持を外圧として、憲法改正手続きを無視しての「解釈改憲」の正当化に悪用してはならない。

 

日経新聞

 中国にどう責任ある行動を促すか、米側と対中戦略をすり合わせていく必要がある。

 

産経新聞

 一方的に防空識別圏を設定している中国に対し、大きな抑止力になる。

 

◇読売新聞

 憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能とすることは、日米同盟を強化する上で、極めて有効な手段となろう。

 

 と述べている。

 

 他に面白かったのは、第二次安倍内閣が多用し始めた「閣議決定」の扱いについて、2013年の特定秘密保護法の議論の時、政権はまず閣議決定をして国会に臨んだ。このスタンスは現在も変わらない。これに民主党岡田克也議員がかみつき「国会で議論してから閣議決定にしないと、立法府が軽視される」と訴えた。これに朝日以下の3紙は同調したが、他の3紙は国会での発言を伝えただけだった。

 

 最後に著者は、これからの新聞の在り方として「公権力の側ではなく市民目線で取材・報道すること」に尽きると言います。ただSNS情報等が氾濫するようになった現在、それで持つかどうかは不透明ですね。