新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

最初から強権的な独裁者だった

 2年前の今日、世界の秩序を変えたプーチンウクライナ侵攻が始まっている。本書は、その年の6月に軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏が過去の記事も引用して、プーチンの所業からその正体に迫るべく発表したもの。著者の書は以前「イスラム国の正体」を紹介している。

 

 引用されている記事は、古くは2000年ころ月間誌<軍事研究>に掲載されたものから、侵攻直前にWebメディア<JBPress>で公表されたものまで多岐にわたる。エリツィンの側近として首相から大統領代行、大統領へと47歳で権力を握った彼は、スターリンにも似た独裁者だが、欺瞞や嘘がうまくその正体を国際社会が知るには時間がかかった。

 

        

 

 政権についてから原油高騰のおかげでロシア経済が上向いたのを「大統領の功績」と宣伝し、メディアを掌握して市民を洗脳した。チェチェン人のテロを装う謀略によって紛争を起こすなど、ロシア周辺の国や地域を着実に影響下に置いていった。情報を操る組織を多用し、国内の統治や洗脳だけでなく、国外の世論・選挙等への介入も大規模に行っている。

 

 <シロビキ>と呼ばれる取り巻き、軍の中枢も支配する一方、<ワグネル>という私兵を用いてアフリカやシリアで利権を確保した。反体制派の政治家やメディアに対しては、旧KGBの長い腕を使って国内にいるか否かを追わず排除している。

 

 現時点では多くのメディアが彼を取り上げ、その正体についてがよく知られるようになったが、本書には興味を惹く点もいくつか紹介されていた。

 

・<ワグネル>の長プリゴジンは、SNS不正利用組織<IRA>の長でもある

・西側のネット上で欺瞞工作をしていて、ヤフコメもその被害に遭っている

・今では、プーチンを侮辱する表現そのものが「違法」である

 

 2020年のナワリヌイ氏暗殺未遂事件では、下着に神経剤ノビチョクが塗られたとあります。遂にプーチンは目的を達したわけですが、ナワリヌイ氏の勇気には敬意を表したいと思います。