新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

連続殺人犯と模倣犯

 本書(2009年発表)は以前「死の天使」を紹介した「CSI:科学特捜班」の、日本に紹介された第6作。今回は寒さも忍び寄るラスベガスで、CSIグリッソムのチームが猟奇連続殺人犯を追う。ご存じCBSの人気TVドラマシリーズだが、絵になるように捜査班のチームにも個性的な人物が集まっている。

 

ギル・グリッソム 科学捜査班主任、専門は昆虫学

キャサリン・ウィロウズ 血痕分析が得意な元ストリッパー

ウォリック・ブラウン AV分析が得意のアフリカ系

ニック・ストークス 毛根・繊維分析が得意な好青年

サラ・サイドル 元素分析が得意なハーバード出の才女

 

 まだ読んでいない4作が「死の天使」以前にあるからだが、ここにある特殊技能が活かされるシーンは目立たない。それよりも、特に本書は猟奇的な連続殺人とそれを追う警察やメディアの苦闘が、生々しく描かれている。

 

 ベガス郊外の家で、一人暮らしの男が死体となって発見された。全裸で絞殺されていて、人差し指が切り取られている。腰には精液と思しき液体が掛けられていた。この手口は、10年前ベガスで5人の男が殺された事件のそれに酷似している。

 

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 この犯人は、被害者を捕縛し衣服をはぎ、凌辱して最後は絞殺する。被害者は全員45~50歳ほどの肥満体の白人男性、犯人は戦利品として指を持ち去っている。<キャスト>とあだ名されたのだが、3人の有力な容疑者までいたのだが結局迷宮入りになっている。ただこの詳細な手口は一部の警官と口止めされたメディアしか知らず、今回の事件が10年間なりを潜めていた<キャスト>が戻ってきたのか、模倣犯かが分からない。

 

 模倣犯だとすると、手口の詳細を知っている一握りの人達が怪しい。グリッソムのチームは、当時を知る新聞社の幹部たちに注目する。死体や遺留物の分析は進むのだが、それをあざ笑うかのように第二の事件が・・・。2つの現場に残されていた精液のDNA鑑定の結果、一人の容疑者が浮かぶのだが彼はこの2年間刑務所に収監されていた。

 

 このシリーズ、鑑識官の地道な捜査が売りで、派手なアクションシーンは少ない。ミステリーとしてはもちろん合格点なのだが、TVシリーズがそれほどの人気を得た理由は分からない。これはDVD買ってきてみる必要がありますかね?