新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アングラ社の超能力者たち

 1982年発表の本書は、有名なSF作家二人が共作した近未来SF。二人とは、

 

・華麗な文体と豊かな幻想性を持った天才、ロジャー・ゼラズニイ(わが名はコンラッドなど)

・空軍退役軍人でゲームに長じたフレッド・セイバーヘイゲン(バーサーカーものなど)

 

 で、解説は両者のいいところが合わさった名作だと本書をたたえている。ぼくことドナルドは、何不自由ない暮らしをしているのだが、記憶をごっそりすり替えられていたことに気づき始める。彼には超能力があり、コンピュータに入りこんでデータを読み取ったり制御できるのだ。今でいう「ハッキング」を、ツールを一切使わないでできるわけ。

 

 彼は周辺のコンピュータにあたって、自分がアングラ・エネルギー社で他の超能力者とCEO直属の仕事をしていたことを突き止める。しかしアングラ社の手先によって、恋人のコーラを誘拐されてしまい、昔の仲間だった超能力者たちに接近する。

 

・アン テレパシー能力を持ち、人の心を読んだり操ったりできる。

・マリー テレキネシス能力を持ち、物理的なものなら手を触れずに動かせる。

・ウィリー 生体反応を操る能力をもち、近距離ならどんな生物も殺すことができる。

 

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 こんな物騒な連中を使って、本来はエネルギー企業(エンロンみたいなもの?)であるアングラ社は何をしようとしたのか、あるいかしたのか、自分は何をさせられたのか?同社はどうやって急成長を果たしたのか?コーラの行方を追いながら、また自分にも降りかかるアングラ社の攻撃を避けながら、ドナルドは自問しつづける。

 

 文中太字で書かれている部分は、ドナルドがコンピュータと会話している部分だ。徐々にアングラ社の中枢コンピュータに近づき、最後に同社の本拠地に乗り込んだドナルドは、他の超能力者たちとも戦いながら、ついにCEOのバルボーと対決する。

 

 まだインターネットも黎明期だったころの作品で、工場の制御システムなどIoTへのサイバー攻撃なども想定されていたことに驚いた。ようやくコーラを助けたドナルドの前に、コンピュータ内に生まれた知性(AIかな?)が立ちふさがる。

 

 このネタなら、800ページほどにもふくらませることも可能だと思いますが、270ページとコンパクトに収まっています。続編の情報もありませんが、デジタル屋としてこの先見性にはカブトを脱ぎましたね。