新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ああ、特攻兵器

  太平洋戦争を控えて、あるいはそれが起こってしまってから、米国に対し少なくとも1/10ほどしか国力のない日本としては、どんな手段を使ってでも戦局を有利に運ぼうとしてあがきまくった。まだ戦前は、本書の冒頭にある「水中直進弾」を開発し、軍機として秘密を守ろうとした。

 

 長距離で戦艦クラスが主砲弾を打ち合えば、弾丸は垂直に近い角度で落下する。しかしある工夫を施すと、敵艦の手前に落ちた弾丸が水中を水平に進み、魚雷のように舷側に命中することが分かったのだ。仮に大和級の46cm弾を舷側に食らえば、酸素魚雷並みの被害を与えることができる。海軍の期待は高まったが、実際の戦闘で効果があったかどうかは定かでない。

 

 本書の後半は「特攻兵器」の記述で埋まっている。純粋な特攻兵器ではないが、真珠湾で全艦が失われた「甲標的」という特殊潜航艇に始まり、沖縄で「義烈空挺隊」が用いた自動吸着爆弾のような兵士が敵艦・敵機に肉薄してこれを破壊するようなものはあった。

 

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 それでも戦果が不十分だと考えた軍首脳部は、本格的な「特攻兵器」開発に着手する。一撃必殺はいいのだが、必ず殺されるという意味の「必殺」である。本書に取り上げられたものは、

 

◆本土決戦のための水上突撃隊「震洋

 艦首に爆薬250kgを詰め込んだモーターボート、重量1.3トン、乗員1名、速度23ノット、敗戦までに6,000隻が完成していた。

 

◆陸軍の特攻連絡艇(レ)

 ほぼ「震洋」と同じ仕様のモーターボート、250kgの爆弾か爆雷2個を後尾に搭載できた。沖縄防衛線などで敵艦に被害をあたえたこともある。

 

◆人間魚雷「回天」

 九三式酸素魚雷(直径61cm)を有人化したもの。炸薬1.6トンは無類の破壊力だったが、実戦で戦果があったとは聞かない。「出口のない海」という題名で映画化された。

 

◆フロッグメン「伏龍」

 2kgの爆薬を竿の先につけた潜水夫、上陸用舟艇などを狙って沿岸に潜ませた。糸満の漁師たちがその任にあたったと伝えられる。

 

◆人間飛行爆弾「桜花」

 先頭部に800kgの爆薬を詰め込んだ有人グライダー、一式陸攻などから敵艦隊近くの上空で切り離されて敵艦に向かう。機動のためのロケットエンジンを装備したものもあった。

 

 これらの多くは実戦に使用されませんでした。それを軍部の「良識」といってはバチが当たると思います。