2017年発表の本書は、新右翼の理論家として「一水会」を立ち上げた鈴木邦男氏の「憲法論」である。著者は、最近はお見掛けしないが、TVの政治番組などでお馴染みの人。「朝まで生TV」などで話を聞くことがあり、短いフレーズでは「まあ、右翼だよね」と思わせるのだが、本書を読むと芯の通った思想家であることがわかる。
学生時代に「三島事件」があり、自身を「愛国者」だと自認していた筆者は感銘を受けるとともに、もっと上手い日本を良くする道はなかったかと考えるようになる。実は三島由紀夫は「愛国者という言葉は好きじゃない」と語り、筆者はそれに幻滅したのだが、今になると三島の言葉の意味が分かるという。
筆者は若いころから憲法改正が目標、
・占領軍による押し付け憲法
・日本語になっていない「前文」
・自立のための国軍を持てるように
と熱心な活動を続けている。しかしいわゆる「右翼」の中には、高邁な思想などかけらもないチンピラ・ヤクザの類が、左翼封じを考える公安警察のおだてに乗って街宣車などで騒ぎまわるものもいた。「一水会」はそれらとは一線を画すのだが、彼らに「裏切者」呼ばわりされることもあったという。
憲法改正は非常にハードルの高いことで、当初は出来ると思えなかったのが本音。確かに問題はあるのだが、憲法の草案を書いた人などと交流するうちに、その文言の裏にある理想なども分かってきたという。著者がなぜ「憲法が危ない」と思うようになったかと言うと、第二次安倍内閣は衆参両院で勝利し、改憲派勢力が両院で2/3を数えるようになったから。
いざ国会発議が可能となると、改憲が改悪になりかねないと思うようになったと著者は言う。特に「愛国心」を国民に求めるようなことは、憲法に書くべきではないと断じている。一部の改憲論者(例えば日本会議とか・・・)は家族の在り方、道徳まで盛り込もうとしていると、筆者は警戒する。これが(この時点では)現実味を増していた日本の改憲論に、50年間憲法改正を訴えてきた著者が反対する理由である。
「COVID-19」禍で、緊急事態条項とかロックダウン論とかが台頭してきていますが、改憲論議はより慎重にという話だったと思います。