本書の発表は2020年6月、「COVID-19」で種々のものが自粛・閉鎖に追い込まれる前に脱稿していると思われる。書写の安西巧氏は日経新聞の編集委員、企業取材が得意で、幅広い分野に見識がある。本書も日本プロ野球(NPB)を論じているのだが、主軸は経営視点だ。表題に「歴史に学ぶ・・・」とあるように、全体の2/3は日本の野球の歴史。アマ時代、メジャーからの触発、プロ野球団登場、戦禍、戦後の復活から現在の12球団制が確立するまでが語られる。
興味を惹かれたのは残りの1/3、NPBをエキスパンションして16球団にする構想。東西と2リーグ制で、4球団づつの4グループに分けるプランだ。米国のメジャー(MLB)は2リーグ・各3地区で合計6グループ、30球団が存在している。これに倣っての構想で、
◆セ・リーグ東地区
読売ジャイアンツ(東京)
東京ヤクルトスワローズ(東京)
新球団(新潟:人口80万人)
◇パ・リーグ東地区
北海道日本ハムファイターズ(札幌)
東北楽天ゴールデンイーグルス(仙台)
千葉ロッテマリーンズ(千葉)
埼玉西武ライオンズ(所沢)
◆セ・リーグ西地区
中日ドラゴンズ(名古屋)
新球団(京都:人口147万人)
阪神タイガース(神戸)
広島東洋カープ(広島)
◇パ・リーグ西地区
新球団(静岡:人口69万人、付近に浜松市もあり)
新球団(岡山:人口72万人)
福岡ソフトバンクホークス(福岡)
他にも、水戸市・金沢市・高松市・那覇市が論じられているが、いずれも人口が50万人に満たず、上記4都市が候補とされている。エキスパンションが論じられる背景は(コロナ前の話だが)、NPBの集客数が伸びていることがある。2005年に1,997万人だったものが、2019年には2,654万人と14年間で33%も伸びた。これは地域球団の営業努力で、かつて巨人戦しか集客出来ないと言われていたのが、全球場平均の集客数が3万人を超えるようになったから。
新聞会社・鉄道会社・映画会社の宣伝部門のようだった「球団経営」が、それ自体で廻り始めたのはいいことだ。しかし、
日本の野球界、その未来 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
で紹介したように、野球人気は足元で弱っている。地域活性化の手段とは理解しながら、長続きするか不安ですね。