新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

東ドイツを駆け抜けるフェアモント

 昨日デイル・ブラウンの「幻影のエアフォース(2002年)」を紹介したが、その中にパイロットの脳が直接操縦する戦略爆撃機やMig戦闘機の話があった。本書はそれより20年早く1980年に出版された、類似アイデアに基づくもの。作者のスティーヴン・L・トンプスンは、空軍の父親を持ち自らも空軍に入隊している。除隊後自動車専門誌の編集者を努めたり、モーターバイクの国際的なレースにも参加した。その経験が色濃く反映されたのが本書、この後合計4作で主人公を務めるマックス・モス軍曹のデビュー作でもある。

 

 時代は東西冷戦期、舞台は東ドイツNATOの軍事演習に特別参加したのは、A-10F型の地上攻撃機A-10は対空・対地ミサイルや30mmガトリング砲を持ち、重装甲された「空飛ぶ戦車キラー」だ。しかもF型はパイロットの脳波で制御できる装置を積み、恐るべき反応速度で相手を倒すことができる。

 

 この機の情報を得た東側は、なんとかこの装置を入手しコピーするなり対処法を編み出すなりしなくてはならない。そこで在東ドイツのGRU部隊コシュカ大佐と、東ドイツ人民警察(ヴォポ)のシュタッフェル軍事諜報部長は、罠を掛けてA-10東ドイツ領内に不時着させようとする。

 

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 一方米軍は、東ドイツパイロットなどを救出する特殊組織を置いていて、今回参加したのがマックス・モス軍曹。将軍の息子でエリート大卒なのだが父親に反発して士官任官を断っているひねくれもの。ただ、レーサーとしての腕は折り紙付きだ。

 

 コシュカ大佐らはA-10Fの1機をMig-25編隊で襲ったが、思わぬ反撃を喰って2機を失う。地上攻撃機と当時の新鋭戦闘機の空戦は迫力がある。しかしついにA-10Fは不時着させられてしまう。パイロット救出と「装置」の回収を命じられたマックスは、フルチューンしたフォード・フェアモント(500馬力、最高時速270km)で出撃する。

 

 マックスはなんとか「装置」を回収するが、ソ連軍や東ドイツ当局に追い詰められる。そこを救ってくれたのは、幼馴染の女男爵の娘ヨハンナだった。2人は追手のBMVやメルセデス、Mi-24ハインドなどの追撃をかわしてポツダム近くのセーフハウスを目指す。

 

 空中戦よりも迫力あったのがカーチェイス、しかしいくらチューンしてあっても非武装の車でハインドや戦車の攻撃を躱せるとは思えませんが・・・。