新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スペンサーvs.グレイマン

 グレイマン(灰色の男)といってもマーク・グリーニーの描くコート・ジェントリーではない。もし相手がその男だったら、いかにスペンサーがタフガイでも、側にホークが付いていても命は助からない。ここで登場するグレイマンは、これまでスペンサーもので何度か出てきて「悪党」ではスペンサーに重傷を負わせたガンマンのことだ。

 

 スペンサーのもとにやってきた依頼人は、これまで名のある男と3度結婚し、離婚するたびに慰謝料などでカネを得たという評判の女ハイディ。今は現在の夫が持つ沿岸のタシュテゴ島に住んでいるが、2度目の夫との間に産まれた娘アデレードが結婚することになり結婚式の間スペンサーに側にいて欲しいという。島は個人所有で、他の住人はいない。警備体制もちゃんとしているのに、結婚式の間に何が起きるというのか?スペンサーは、色気のあふれるハイディに恐れをなしてボディガード代りにスーザン・シルヴァマン博士を同行することを条件に引き受ける。

 

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 二人が島で案内された部屋は、豪華ホテルのスイートを上回る素晴らしさだった。ただスペンサーは島でかねて因縁のグレイマンがいることに気づき、何か妙なことが進行していると警戒する。式に列席するに短銃身の.38口径拳銃しか持ち込めなかったスペンサーの前に、サブマシンガンMP9を持った6人の男が現れた。彼らを指揮するグレイマンは、自らのグロックで神父と新郎を射殺する。

 

 さしものスペンサーも大勢の人質同然(その中にはスーザンもいる)の前で抵抗は出来ず、おりからの嵐に紛れて1人のマシンガン男を倒すのが精一杯だった。グレイマンは新婦をヘリコプターに乗せて逃げ、あとには警備員4人を含めた7人の死体が残った。しかし誘拐事件にしては身代金要求は来ないし、なによりスペンサーが知っているグレイマンの行動様式からは理解できない犯行である。

 

 「側にいてくれ」との依頼は終了したのだが、アデレードを独自に探し始めるスペンサーとホークの前には、様々な妨害が降ってくる。ついにはスーザンとの夕食を取っていたいたレストランにグレイマンが現れ「手を退け」と迫る。それらを乗り越えて進むスペンサーの前に現れた真実は・・・。

 

 「ダブルプレー」などで発揮された、作者のストーリーテリングのうまさが本書でも生きています。作者もこのあと数冊を遺して世を去りました。残りは大切によもうと思います。