新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「基地の島・自然の楽園」の真実

 僕ら夫婦も大好きな国内旅行先である沖縄、何がいいかと言うと、温暖でアロハで過ごせるところと、物価の安さ。僕は前者が、家内は後者が気に入っている。定宿のある宜野湾市普天間基地を抱えていて、早く移転が完了してほしいと思ってもいる。

 

 本書は2015年発表と少し古いのだが、沖縄の真実が書いてるというので買ってきた。実際うすうす現地で感じていたことが、本書には赤裸々につづられている。

 

辺野古は新基地でもなく、他の候補と争って名護市が勝ち取った土木工事。

・浅瀬に張り出す工法は、地元建設業者でも可能だから選択された。

・軍事基地全体の83%は本土にあり、そのうち米軍専用が74%沖縄にある。

・基地反対と表では唱えるが、基地が減って反対運動がしぼむことが不安。

 

 在沖縄の米国高官が「沖縄の人はタカリ」と日本語で言ったように、基地負担と沖縄振興予算は連携関係にあり、振興予算なくしては地域経済が成り立たないのも事実だ。

 

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 そこまでは僕も予想はついたのだが、その背景でもある地域の貧困について読み進むうち怒りがこみあげてきた。驚いたことにここは琉球王朝時代と変わらない「貴族と庶民」の二階層社会。米国の過去の「白人と黒人」ほどの格差社会が、僕らに見えにくいところにある。

 

 支配層は琉球大学OBを中心とする、自治体・インフラ企業・建設業など大企業・メディアの権力者たち。世代をまたがるネットワークで、統治体制を整えている。振興予算なども、彼らが自由に配分(着服?)していて、庶民の手元には届かない。こんな中人気の職種は公務員である。

 

 1人当たりの年間所得が全国平均288万円だった2010年の例で、沖縄県は203万円で最下位。しかしこれには全国大差の無い公務員も入っている。公務員(労働者中の約10%)と一般の格差は2.7倍にもなるという。ほかにも、

 

・生涯未婚率 男性1位、女性2位

・離婚率 9年連続1位

・飲酒で補導される少年 全国平均の10倍

 

 などと貧困層の家庭崩壊が社会に重くのしかかる。物価が本土より安いのも当然と言えよう。本来ならこのような事態に対処せよというべき左翼メディアが沖縄にはない。左翼政党自身も支持母体が公務員組合なので、支配層の味方なのだ。基地問題中央政府と対立「All沖縄」などと結束を図るだけの首長と周辺だけでは、沖縄の未来は描けませんよね。