本書は、2016年に自由人権協会(JCLU)が開催した「監視の”今”を考える」の内容を書籍化したもの。2013年に米国政府の内部情報をリークしてロシアに逃れているエドワード・スノーデンがビデオ参加し、日米の識者が彼に質問したり討論した記録である。
国家安全保障局(NSA)の下請け会社職員だったスノーデンは、米国政府が国内外の市民を電子的に監視していることに疑問を持ち、内部情報をメディアにリークした。なかでも3つのプログラムについて、注目が集まった。
1)電話のメタデータ・コレクション
2)PRISM
米国に本社を置く9社のIT関連産業に、電子メールやSNSの内容を提出させる。
3)UPSTREAM
米国本土に繋がる海底ケーブルに、捜査官がアクセスし通信内容を知る。
これによって、国内では全てのムスリム個人を当局が監視していた。きっかけは9・11テロだったが、テロの危険性がそれほど高くなくなっても監視は続き、むしろ強化されていったという。ムスリムだけではなく、人権派弁護士やジャーナリストまでが対象になっている。あるパネリストが言うように「テロの脅威は、インテリジェンス機関にとっての燃料」なので脅威は誇張されやすいが、米国内でもテロの犠牲になる確率は400万分の1だという。
スノーデンは日本政府の監視体制は米国ほどではないが、日本にはテロの脅威はほとんどなく米国を模した監視は不要だと述べている。弁護士やジャーナリストは、
・政府の監視には、透明性と説明責任が必要
・それを政府にやらせることができるのは、メディアによる監視
だとしているが、オバマ政権がやや透明性を高めようとしているのに、安倍政権は逆の方向に向かっているともいう。
主として人権派の議論でしたが、スノーデン事件の見方(のひとつ)として参考になりました。