新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

各国諜報機関の評価

 本書は、何冊かインテリジェンス関係の著書を紹介している、元外務省分析官佐藤優氏の各国の諜報機関を分析した書。元原稿は、<EX大衆>に2008~2011年にかけて連載されたものだ。ゾルゲ事件など歴史上で諜報機関が関わったことの解説(解釈?)で始まり、最後は「日本はかつてインテリジェンス大国だった、それを思い出せ」と、帝国陸軍の「統帥綱領」を引用している。

 

 原稿が書かれた時期は、自民党政権の終わりから民主党菅政権までで、東日本大震災福島原発事故尖閣諸島の緊張などで、日本の危機が顕わになったころだ。まず日本の現状の諜報能力は、個別の能力はまんざらでもないが、内調、公安、防衛省等がバラバラに動き、統率が取れていないという。各国の諜報(防諜も含む)能力については、

 

        

 

◇米国

 通信傍受や衛星利用などの技術力は飛びぬけているが、諜報でミスれば国が亡びるという危機感が薄い。投入している体制や資金等から見ると、能力は高くない。脇が甘いので、9・11テロなども予防できなかった。

 

◆ロシア

 エリツィンが弱めたKGBの体制を、プーチンが立て直した。ボルシェビキ時代からの伝統もあり、能力は高い。しかし、軍の諜報機関GRU含めて組織自体がカネ儲けに走る傾向がある。かつて対立していた中国の情報を、一番多く持っている。

 

◇英国

 大航海時代以降の伝統もある、強力な諜報機関を持つ。市民の理解もあって、国内外で大きな権限を持っている。一方、国力では大国とは言えず、限界も理解した活動をする。

 

イスラエル

 アラブの海に浮かぶ小国、いつ国が無くなるかもしれないとの危機感が強く、諜報能力は高い。

 

◆中国

 統括的な機関ではなく、通信社・外交官・一般企業まで含めて、個別の諜報活動が重なり合っている。

 

 インテリジェンス(活動)とは、戦争に負けないためにすること。国民全体の危機感が無ければ、ヒト・モノ・カネを用意するだけでは不足のようです。