昨日「中国のデジタル・イノベーション」という日中連携を推奨する本を紹介したのだが、2021年発表の本書はそれに警鐘を鳴らした。読売新聞が2020年に1年間、「安保60年」という連載を掲載した内容を書籍化したもの。中露対日米欧の「テクノロジー冷戦」が始まっている状況で、中国がいかに技術やデータを「西側」から窃取しているか、日本はそれをどう防ぐべきかを論じている。その主張のいくつかは、2022年に成立した「経済安全保障推進法」に取り入れられている。
技術やデータの窃取は、主に7つのルートで行われているとある。
1)人材リクルート
中国政府の「千人計画」は海外から優秀な研究者、技術者を厚遇して呼び寄せるもの。日本からは少なくとも44名の研究者が招かれている。そのうち数人は「日本学術会議」の構成員。
2)投資・買収・合併
テンセントが楽天に出資するなどの例があり、役員を送り込んで技術やデータを見ることができるようにする。
3)共同研究・事業
特に大学の意識は高くない。資金供与を受けて重要な情報を持ち帰られたり、盗まれても気付かないことも。
4)留学生等の派遣
国家サポート研究者が、留学生のカバーでやってくる。米国では訴追されたケースも複数発生している。
5)国際会議等での個別接触
種々の会合で研究者に近づき、個人的な付き合いを装って取り込もうとするケース。
6)サイバー攻撃
研究機関、重要産業などをターゲットにした、情報窃取目的の攻撃。
7)物資の購入
デュアルユースの物資について、民生用を偽って輸入し軍事転用したり、リバースエンジニアリングする。
特に大学の姿勢には疑問符が付く。いずれも資金難で、資金提供などちらつかされると安易にそれを受けてしまうことも。また「日本学術会議」には厳しい指摘、国内では軍事技術アレルギーを煽って研究者を束縛し、中国には平気で協力するとあります。このあたりは、うなずける話ですね。