新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

2時間ドラマから映画へ

 本書は、TV朝日の人気ドラマ「相棒」の最初の映画脚本をノベライズしたもの。2008年公開の映画で、脚本は戸田山雅史、ノベライズは司城志朗。2時間ドラマでスタートしたこのシリーズ、今はシーズン21を放映中である。映画も、スピンアウト2作(鑑識米沢守や捜査一課伊丹班を主人公にしたもの)を含め、6作が公開されている。

 

 TVシリーズでは、警視庁特命係杉下警部の相棒は4名が務め、現在は初代の亀山薫が再登板している。やはり相棒は初代の彼がいいというファンも多いゆえの起用だが、そろそろシリーズも幕かとの噂もある。

 

 本来2時間ドラマというのは、映画と共通点が多い。ただ映画となると、製作側の力の入れようも変わってくる。それは脚本も同じで、並の2時間ドラマと比較されないように多くの趣向を盛り込んでいる。

 

        

 

・ネット上の「人民裁判」で死刑を宣告された50人もの人々

・判決に従って殺される、キャスター、判事、整形外科医

・片山雛子代議士を狙う爆弾テロ

・現場に残されたチェスの棋譜から、杉下と犯人のチェス対決

・犯人が予告する東京ビッグシティマラソンでの犯行

 

 等々、読者(視聴者)の前にめまぐるしく事件が展開する。5年前に起きた、発展途上国でゲリラが日本青年を殺した事件が背景になることが分かってくる。人質になった青年を救出すべきという世論が、彼が殺害された後「自己責任論」が強くなった。今回の被害者は、いずれも「自己責任論」をメディアに発信した人たちだ。

 

 TVシリーズの全キャストが何らかの形で登場し、各々にそれらしい行動を割り当ているのに脚本家は腐心したように思われる。杉下や亀山のプライベートな部分もしっかり書き込まれ、「花の里」の女将や亀山の細君がマラソンに参加するシーンもある。

 

 21年続いてきたこのシリーズ、そろそろ寿命ですかね。最近は見ていないので、確たることは言えませんけれど。