新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

キリスト教世界の繋がり

 本書は、これまで4冊を紹介している21世紀研究会の「世界地図シリーズ」の1冊。今回は「人の名前」である。中国や朝鮮半島、その他地域の名前にまつわるエピソードも興味を引くが、何と言っても本書全体の2/3を占めているキリスト教文化圏の名前の由来が面白い。

 

 中学生のころから欧米ミステリーにハマり、スパイものや軍事スリラーにまで範囲を広げていったことから、読んだ本の登場人物の多くがキリスト教文化圏の人だった。英米はもちろん、独仏伊やロシア、南欧中欧からイスラエルまで、多くの名前を見てきた。本書は、スポーツ選手・映画俳優・芸術家・政治家などの例を引いて、名前のルーツや語源を説明してくれる。それ以上に、僕はミステリーなどの登場人物の名前で、なるほどとうなずいたケースもあった。

 

 まず「~の息子」という意味では、3通り紹介されている。

 

1)~son

 例としてDavidsonが挙げられている。Davidは旧約聖書ダビデが語源だが、その息子というのはスコットランド以外ではポピュラーではない。だからDavidsonの先祖はスコットランド人の公算が高い。

 

2)O’~

 例としてO'Brienが挙げられている。Brienはアイルランドに多い苗字、Connellなどと並んで、接辞Oが付いているのは、やはりアイルランド系の血筋。

 

        

 

3)Mc~

 例としてMcGregorが挙げられている。グレゴリーの語源はギリシア語の「油断なく」だが、教皇グレゴリウスからポピュラーになった。イングランドにも多いが、ケルト風にGregorとしたのがスコットランド。McGregorはスコットランドの有力な豪族の苗字である。

 

 やはりキリスト教文化圏では、それにまつわる名前が多い。国が違うと綴りや発音が変わるが、語源は旧聖人ということもある。例えば聖パウロからは、男ならポール(英)やパブロ(西・露)、女ならポーラ(英)やパウラ(西)となる。

 

 僕のペンネームNickyの語源は、ギリシア語で「勝利」を意味するNike。そこから聖ニコラウスが生まれ、Nicholusという名前がポピュラーになった。米国ではドイツ&オランダ系移民にこの名前が多いとある。フランスではNicol、北欧ではNilsとなる。

 

 いろいろ摩擦はあっても、キリスト教文化圏は、底流では繋がっているということでようね。