新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

青年医師ヴィンスの淡い恋

 1989年発表の本書は、アランナ・ナイトの「ファロ警部補もの」の第三作。3日続けて紹介することになったのは、1980年代のエジンバラを舞台にした特色あるミステリーである上に、第二作「エジンバラの古い棺」の事件では主人公ファロ一家に歴史的な大事件がのしかかったから。これは通常の時代をさかのぼったミステリーではなく、スコットランド王家・イングランド王家の血筋をめぐる大事件に発展したのだ。

 

 しかし一転して、本書では「普通のミステリー」に戻っている。シリーズも固まってくるとジェレミー・ファロと妻の連れ子の息子ヴィンス以外にも、レギュラーが見えてきた。ファロ家の家政婦ミセス・ブルックのほか、捜査陣として、

 

エジンバラ市警察のマッキントッシュ警視

・同、ダニー・マクリーン巡査部長

・警察医メルヴィル・ケラー医師

 

 がレギュラーだ。本編では、ケラー医師一家が事件に巻き込まれる。ケラー医師は医局でヴィンスの上司であるとともに、長年の功績でナイトの叙勲を受ける直前まで来ている名士。妻のメルビルとは20余年連れ添っているが、子供はない。この夜も彼の自宅では、名士たちを招いたパーティが開かれていた。警視やジェレミー&ヴィンスも招かれたのだが、そこでメルビルに対してヴィンスが淡い恋心を抱いていることをジェレミーは初めて知る。

 

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 ケラー家では長年務めた家政婦が辞め、新しい家政婦は働きが悪い。この日も準備にメルビルが右往左往していて、激しい夫婦喧嘩が起きてしまった。翌朝メルビルは、数日知人を訪ねるとしてエジンバラを離れるのだが、そのまま行方不明になってしまう。数日後、彼女のミンクノコートは血まみれで、ナイフと共に発見され、エジンバラ警察は殺人の疑いがあると捜査を始める。

 

 ジェレミーの捜査では、ケラー医師が(今でいう)DVで、メルビルに生傷が絶えなかったこと、血の付いたナイフがケラー医師のものだったことなどから、ケラー医師が有力容疑者になる。ケラー医師が嫌いなヴィンスらは即刻逮捕せよというのだが、捜査経験豊かなジェレミーは、違う視点で事件を見ていた。

 

 第一作の紹介に「軽快な犯人探し」とあったので読み始めたこのシリーズ、本編は普通のミステリーに戻っていました。ヴィンスと継父のジェレミーの掛け合いは面白いのですが、もう一歩食い足りないところがありますね。