新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

SAS出身の刑事ジョン・リーバス登場

 本書の作者イアン・ランキンは、スコットランドのファイフ生まれの作家。1986年のデビュー作は普通小説だったが、翌年発表の本書でエジンバラ署の一匹狼刑事ジョン・リーバスを主人公としたシリーズを始める。これまで1ダース以上の作品が、本国では出版されている。

 

 作者同様ファイフで生まれ育ったリーバスは41歳、エジンバラ署の部長刑事だ。かつては、陸軍の中のエリートである空挺部隊で非常に優秀な兵士だった。特殊部隊であるSASに加わりそこでも高い評価を受けたが、事情があって退役、故郷に戻って警官になった。妻とは仲たがいして離婚、12歳になった娘のサマンサは妻ローナのところにいる。

 

 リーバスの父親は催眠術師だった。舞台の上に観客を上げ、催眠術を掛けて見せる「見世物師」。家業は弟のマイケルが継ぎ、父親以上の人気者になって稼ぎもいい。特に兄弟の交流もなく、マイケル家に立ち寄るのは近くにある父親の墓を訪ねた帰りくらいだ。エジンバラの街では、10歳前後の子供が誘拐されて殺される事件が複数起きていた。

 

        

 

 リーバスは署内でも孤独だ。上司のアンダーソン主任警部とはソリが合わず、相棒のモートン部長刑事とはスポーツの話をするくらい。ただ広報部の女警部ジル・テンプラーとは時々酒を飲む仲で、唯一の話し相手といえる。

 

 リーバスのところには時々「結び目のついた紐とマッチ棒で作った十字架」が封筒に入って郵送されてきた。最初は分かれた妻のいやがらせと思ったリーバスだが、やがて誘拐殺人犯からのメッセージであることに気付く。誘拐殺人犯が最終ターゲットとして狙っていたのは、じつはサマンサだった。サマンサを誘拐されてしまったリーバスは、主任警部に捜査陣から外されながらも単独捜査(というより復讐)を始める。サマンサが狙われたのはリーバスの過去に手がかりがあると考えたジルは、マイケルの催眠術を使ってリーバスの過去を知ろうとするのだが・・・。

 

 通常シリーズものでは主人公の過去に絡み家族を巻き込む事件は、最初の作品では出てこない。読者が主人公に愛着を持ってからの方が、感情移入しやすいからだ。しかし本書は最初から「リーバス刑事自身の事件」である。

 

 深い心理描写やスピーディな展開など、なかなかの腕前の作者です。どうも単発もので書いた作品をのちにシリーズものにしました。明日は第二作を紹介したいです。