新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

レアアースという資産(前編)

 今年初め、トム・クランシーの遺作「米露開戦」を紹介した。最後の共著者マーク・グリーニーによって、このシリーズは書き継がれていくことになる。本書(4冊組)はグリーニー単独の手になるもので、二期目半ばのライアン大統領は、北朝鮮の陰謀と対峙することになる。

 

 ライアン政権は(史実同様)ロシア・ウクライナ間の緊張、中国の台頭と台湾海峡の危機に対処することが大きな課題。北朝鮮は時折ミサイルを撃ち、核実験はするものの、米国本土に直接の危害を加える能力はなく、政治課題としては大きくはない。しかし北朝鮮の<大元帥>崔は、なんとか米国に届く大陸間弾道弾と、核兵器を開発させようと焦っている。しかしカネも技術もないため、開発計画は停滞している。

 

    

 

 崔は国土に大量に眠るレアアースを武器にすることを思い立ったが、実質中国企業に支配されているのが気に入らない。崔は情報機関のトップと天然資源会社の社長を更迭し、後任の2人に無理な注文をつける。3年以内のICBM開発と、自国でのレアアース精製ラインの確立である。前任者は文字通り「犬に噛み殺される」処刑を受けた李将軍は、黄社長と組んで飛び切りの陰謀を巡らせる。

 

レアアースの採掘利権をブラジルの大富豪に渡す代わりに、莫大な資金を出させる

・中国の精錬企業を追い出し、不足する技術者などは闇ルートで確保する

ICBMに必要な部品も、(カネにあかせて)闇ルートで密輸入する

 

 これでも、与えられた期限に間に合うか分からない。

 

 ライアン大統領の息子ジュニアは、秘密組織<ザ・キャンパス>の分析官として、北朝鮮の陰謀に巻き込まれる。彼らは民間諜報機関SGIPの活動を追っていて、北朝鮮が技術者を不法に入国させる片棒をSGIPが担っていることを知る。各国から集められた技術者は、ホーチミンから北朝鮮に出発しようとしていた。

 

<続く>