新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

もともと特別な連合国家

 今日からG7広島サミットが始まる。ただ参加各国首脳は皆、内憂外患の中にある。特に初参加になる英国スナク首相は、厳しい政治環境に置かれている。ウクライナ紛争で情報戦や軍事支援で存在感を示すものの、英国の衰退は明確だ。国内は、財政不安・物価高騰・労働力不足などで騒然としているが、その応分の原因は Brexit にある。

 

 2021年発表の本書は、日経欧州総局中島裕介記者の現地レポート。イギリスは4国の連合王国だが、今解体の危機にあるという。ワールドカップなどでは個別に代表チームを出してくる4つの国。最大の人口・GDPを持つのはイングランドだが、スコットランドデンマーク程度の国力は持っている。

 

 スコットランドBrexit 以前から独立機運はあり、前回の国民投票では独立派が4割、EU離脱反対は6割を越える。今国民投票をすれば、独立派多数はあり得る結果だ。

 

        

 

 スコットランドが独立してEUに復帰したいとした時、イングランドとの国境に税関などを設けないといけない。また通貨はどうするか?EU側はポンドからユーロへの転換を財政規律なども含めて求めるだろう。核兵器問題もある。核搭載戦略原潜の基地はグラスゴーにある。そのままスコットランド編入されれば、新しい核保有国ができるし、イングランドの軍事力は激減する。

 

 北アイルランドは、20世紀に延々続く紛争があったところ。ダブリン~ベルファスト間に、今は国境がないのだが上記同様必要になるし、アイルランドとの合併で島全部EUに帰属という可能性もある。

 

 本書発表以降、ジョンソン・トラス・スナク政権は、

 

・貿易額の8割をカバーするFTA締結

・TPP加入などインド太平洋へのシフト

 

 を推進し日本とは「第二次日英同盟」的な親密さになっている。しかし一般市民が「インド太平洋へのシフト」に関心を払う気配はない。もともとシェンゲン条約にも入らず、ポンドを維持してきた特別(わがまま)な国でした。今後の行方は・・・。