新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

お多福の女検事霞夕子

 本書は、以前「Wの悲劇」を紹介した夏樹静子の中編集。作者にはもう一人ハーフの女弁護士朝吹里矢子のシリーズがあるが、これは女検事「霞夕子シリーズ」。彼女は検察官、それも捜査主任検事だ。40歳代前半の彼女は、寺の住職である夫を持つ。小柄で風采が上がらず、お多福(古の言葉である)なポッチャリ顔で間延びした口調で話す。

 

 しかし、その外見に騙されてはいけない。彼女は犯罪者の油断を誘い、真実を暴くのだ。雰囲気としては<女コロンボ>というところ。朝吹里矢子シリーズは普通のミステリーだが、霞夕子シリーズは倒叙もの。最初に犯罪者側からの仕掛けを描き、第二章から霞夕子ら官憲が登場する。

 

 刑事たちは真犯人の手に乗ってあらぬ方向に捜査を向けるのだが、主任検事は騙されない。警察と検察の意見対立が、両者の本質的なコンフリクトを背景に描かれる。警察は、検察力を裁判所内に閉じ込めてしまいたいと思っている。しかし現場が大好きな夕子は、そんな刑事たちの白い目を受け流して勝手な捜査をするわけだ。

 

        

 

 本書には70ページほどの中編が4作収められている。犯罪者も女性が多く、奸知による犯罪というよりは、追い詰められた女性がやむなく犯行に及ぶストーリーが多い。このあたりが作者らしいところだが、かといって夕子が情状を酌量して追及の手を緩めると言うことはない。犯人が追い詰められる部分に、社会派ミステリーの雰囲気もある。

 

 TVシリーズにもなっていて、日本テレビの「火曜サスペンス劇場」の常連である。霞夕子を演じたのは、桃井かおり(10作)、鷲尾いさ子(20作)、床嶋佳子(5作)、真矢ミキ(2作)で、2011年からは沢口靖子主演でロングラン放映されている。

 

 お多福・もっさりという原作のイメージに合う人はいませんね。あえていうなら最初の桃井かおり主演かな。沢口靖子主演は「科捜研の女」だけで十分だと思います。