2021年発表の本書は、「ルポ貧困大国アメリカ」などを著したジャーナリスト堤未果氏のデジタル日本への警告。以下の点は僕もよく知っていて、推進側を努めているのだが、批判的な視点だとこうなるのかと驚かされた。
・最高権力を持つ「デジタル庁」
・日本の個人情報を売り渡す「日米デジタル貿易協定」
・中国企業が日本にサーバを置かずにデータを獲れるRCEP
・デジタル企業のビジネスをしやすくするための「スーパーシティ法」
などとなっていて、平井先生や竹中先生が再三実名で登場し、酷評されている。
勉強になったのは、米国の事例。2005年ジョージア州フルトン郡から、富裕層だけの街が独立したという。自分たちの税金が貧困層のケアに使われるのに不満な人たちが「民営化された町」を作って独立したのだ。警察・消防・医療なども全て民営化、その町でのサービスは非常に向上した。一方残された人たちは、警察を呼んでも2日かかる状況に置かれ、街は荒廃してしまった。
このような新自由主義の問題点を見てきた筆者は、デジタル化を「新自由主義の加速器」と見て警戒する。米国以外を見ても、
・キャッシュレス大国韓国では、銀行がバタバタ潰れ、家庭の負債は世界一
・中国では芝麻信用で市民がレーティングされて、デジタル管理されている
のように、市民にとっていいことはなく、為政者にとっては都合のいいことばかりだ。WEFは、難民問題の解決に個人IDを振ることを提唱し、チップの人体への埋め込みまで考えているとある。
「COVID-19」禍で進んだオンライン教育についても、筆者は警戒感を隠さない。<GIGAスクール構想>は外資の陰謀、子供のデータを収集するためだとある。アフリカ諸国への教育支援も、世銀と巨大ITが仕組んだものにされていた。
筆者は米国で貧困層を食い物にしているエリート集団と巨大企業が、世界制覇を狙っているとの危惧を持ってる。それは分からなくもないですが、ちょっとひどく非難(ファシズム!)しすぎですよね。