2021年発表の本書は、何冊も紹介しているPHP新書の<世界の知性シリーズ>。今回の知の巨人は、雑誌<WIRED>の創刊編集長ケヴィン・ケリー氏。5,000日(約13年)に一度、テクノロジーの進歩によって社会に大変革が起きると主張し、これまでGAFAの台頭などを予想してきた「ビジョナリー」と評される人だ。
インターネットの登場から5,000日経って、GAFAが台頭しSNS文化が浸透した。そして5,000日後には「ミラーワールド」が出現しGAFAではない新勢力が台頭するというのが予想。この言葉が表す世界は、
・リアル世界の多くがAIに接続する
・拡張現実(AR)が広がり、100万人以上の人がそこで暮らす
というもの。「ミラーワールド」は新しい技術によって支えられた、新しいプラットフォームにあたる。
具体的に、いくつか注目すべき提言(予言?)がある。
1)GAFAへの規制は無意味だ
各国政府が規制をもくろんでいるが、規制すればするほどGAFAを上回る(倒す?)代替勢力の出現を抑え込むだけで、GAFA独占の世界を長持ちさせることになる。
両面あるというのは当然だが、わずかでもよい面が勝れば、その技術には意味があると言いたいようだ。
3)AIは今後50年進化を続けるが、汎用AIは登場しない
5,000日論者としては、4世代近くAIは進化すると言っている。それでも人間を越えることは無いので、人間はAIを上手く使いクリエイティブなことに注力すればいいといいうことだろう。
4)人は学び方を学ぶべし
テクノロジーや社会環境の変化は、さらに激しくなる。学んだことは直ぐに陳腐化するので重要なのではない。重要なのは(変化に適応するため)新しいことを素早く学ぶコツをつかむことである。
これからの技術と社会の関係について、とてもフェアな主張でした。51%良ければいい・・・。技術屋としては、もう少し良いと思っているのですがね。