新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

第二帝国崩壊の真実

 第二次欧州大戦の経緯は、多くの書籍・ゲームで知っているのだが、第一次の方はというと、日本軍が大きな役割をしなかったせいか知識が薄い。

 

枢軸国:ドイツ、オーストリアハンガリー、トルコ他

連合国:フランス、ロシア、イギリス、イタリア、アメリカ、日本他

 

 と分かれるのだが、ロシア革命でロシアが連合国側から脱落。アメリカは参戦したものの大きな働きをしないうちに枢軸側が腰砕けになって休戦となった。第二次大戦のようにベルリンがソ連軍に占拠されての降伏ではなく、ドイツ軍はまだまだ余力を残していたはずだ。なぜ腰砕けになったか?その謎が、本書で解けた。2017年発表の本書は、城西国際大学教授飯倉章氏の手になる「ドイツというシステム」論。

 

 1918年春、すでにロシアは脱落していて、ドイツは主力を西部戦線に向けることができた。イタリア戦線は問題にもならなかった。イタリア軍は70万人の損害を出したが、死傷者は4万人ほど。他は捕虜となるか逃亡したのだ。

 

        

 

 ドイツ軍は米英仏軍に対し攻勢をかけ、戦術的には大きな戦果を挙げた。そんな「最強ドイツ軍」が、この年の8/8を境に崩壊する。厭戦気分から投降、逃亡、あるいは叛乱と規律がイタリア軍並みになってしまう。

 

 サッカーの試合でも、経済問題でも、ドイツは「勝つときには容赦なく、負けるときには拙劣」だと筆者は言う。上意下達の徹底した民族性で、皆組織目標が金科玉条になる。だから個人として虐殺に抵抗があっても、命令されてならやってしまう。

 

 このシステムは、TOPの精神状態を不安定にするとある。TOPはだれも命令してくれず、自己で全てをカブるからだ。このころのドイツ軍は、皇帝・宰相・参謀総長の3角形がうまく機能すれば強く、乱れれば脆い。その脆さが、第二帝国崩壊の主因だとある。

 

 読んでみて、当時のドイツ陸軍は戦術に優れ、戦略に疎い特徴がありましたね。日本も同じ傾向にあるかもしれません。戒めないと。