2022年発表の本書は、気鋭の経済評論家加谷珪一氏のインフレーション論。景気後退期のインフレーションを、スタグフレーションと呼び経済学上極めて良くない事態とされている。今の日本は、そうなりかかっているというのが筆者の主張(*1)である。
本書で引いている例は、1970年代の米国。産業は衰退し、失業が増え、賃金はもちろん上がらない。しかしモノの値段は上がって、スタグフレーションになっていたとある。それを「レーガノミクス」という構造改革で、(労働者も経営者も)多くの血を流しながら生産性を上げることで乗り越え、今の繁栄を築いた。
今の日本は、
・国際紛争による、供給の不足
・円安による輸入価格の高騰
・「COVID-19」対策などで乱発されたカネのだぶつき
でインフレーションになっている上、原材料費高騰を価格転嫁できないゆえ絞ってきた人件費をさらに絞る羽目になって賃金が上がらない。失われた30年の負債を負って不況に陥ている。まさにスタグフレーションである。
日銀が金利を上げ(られ)ないものだから、円安が続くし、これ以上政府がバラマキもできない。家計は苦しくなるばかり。ではどうすればいいのか、筆者は産業界全体としては、必死で生産性を上げるしかないという。これまで30年間上がらなかったものを上げるには、上記のように多くの血を流す必要があるだろう。
その間家計を少しでも守るには、
・高額購入品(*2)を徹底して節約
・銀行預金は目減りするが、金はNG。外貨預金等は場合によってはOK
・保険は要不要を厳しく選別
するべしとある。世帯収入を増やせるなら、副業等できるかぎりのことをすべきだともある。最後は荻原博子さん風になりましたが、生産性向上までのロジックは正鵠を射ていると思います。さて、生産性向上に流す血・・・が出来ますかね。
*1:本書発表後1年経つが、その予測は的中していると思う。
*2:住宅や自動車が代表的