新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

米国中西部を駆け抜ける「宝探し」

 1995年発表の本書は、スー・グラフトンの「キンジー・ミルホーンもの」。シリーズ中最高傑作との評価されるもので、サンタ・テレサの私立探偵キンジーは、ダラスからシカゴまで駆け抜ける「宝探し」をする羽目になる。

 

 きっかけは、家主ヘンリーの知り合いの老人が死んだこと。彼は太平洋戦争中、シェンノート准将の義勇航空隊に入って日本軍機と闘ったというが、死後息子のチャーリーが国防省に問い合わせると「在籍記録ナシ」との回答。チャーリーは(軍人恩給欲しさだが)父親の従軍記録を探してくれとキンジーに依頼する。

 

 父親の旧友だという男レイが現れ一緒に遺品を整理するのだが、レイは過去を語らない。やがて隠し金庫から古いカギが見つかるが、どこのカギかはわからない。調査を続けるキンジーは、遺品をダッフルバッグに詰めて逃げる男女を目撃し、尾行を始める。女は妊婦のようで、空港で男と別れてダラスに向かった。

 

        

 

 ダラスのホテルに投宿した女ローラの身辺を探るため、キンジーはホテルのメイドに変装して彼女の部屋に忍び込む。手掛かりらしきものを掴みかけた時、レイがダラスにやってきた。ローラと一緒だった男ギルバートに暴行を受けたという。実はローラはギルバートの子を宿しながら、彼から逃げていた。ギルバートは凶悪な男、レイを拷問してローラの行き先を聞き出したのだ。3人はダラスを逃げ出して、シカゴに向かう。

 

 死んだ老人もレイもギルバートも、みんな<無法者>。40年前に銀行強盗を働いてムショに入っていた。盗んだカネや宝石、有価証券は老人がどこかに隠したまま。図らずも「宝探し」に巻き込まれたキンジーは・・・。

 

 ヘンリー(85歳)の兄ウイリアム(88歳)と居酒屋女主人ロージー(77歳)の結婚という、人生100年時代のホンワカした雰囲気から一転、キンジーの追跡行は深刻な逃避行に代わる。確かに本書は傑作ですね。次は「N」ですか。