新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ローカル型産業で地方再生

 2021年発表の本書は、実践型の企業再建屋冨山和彦氏が、高名なジャーナリスト田原総一朗氏と4回にわたって対談した結果を書籍化したもの。冨山氏については、

 

昭和の因習を脱ぎ捨てよ - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

「中堅企業」支援の方向性(2) - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

 

 で取り上げたように、非常に見識ある「再建屋」だと思っている。実際カネボウJALなどの再建に関わり、産業革新機構COOも務めた。表題にいう「L型経済」とは、ローカル経済のこと。地方再生などの掛け声(本書の時代にはGoToキャンペーン)で予算が付くが、思ったほどの効果はない。

 

       

 

 これは日本の産業界が、前時代的なビジネスモデルから脱却できていないからだという。一時期日本産業界もG(グローバル)型産業で勝利し、その残滓が残っている。新L型産業としては、地域のエッセンシャルワーカーの給与を上げ、新しい中間層をつくるべしとある。

 

 これらの職種は必ず「人手」がいるし、デジタル化で駆逐されることも、グローバル化で失われることもない。実際に東北地方で交通事業を展開している筆者は、

 

・本当に必要なのは優れた経営者、外部登用も積極的に行う

最低賃金を上げ、経営が苦しくなった事業は、優れた経営者のもとに集める

・規模の経済効果もあり、コンプライアンスや財務面での強化も図れる

 

 という。かといって、1社に囲い込むのではなく、10年をめどに転職できるように計らい、雇用を流動化させる。東京に出てきて、G型産業の末端で苦しんでいる若い人たちは、故郷に帰りL型産業で生きていく。そうすれば、結婚もふえ出生率も高くなる。

 

 主張にほとんど異論はありません。ただGAFA型産業は一部エリートだけのもので、一般人の雇用を生まないとあるのは間違いだと思います。GAFAというプラットフォーム上で数々のアプリやサービスが生まれ、雇用を増やしているのですから。