新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

記者は何故戦場を目指すのか?

 2021年発表の本書は、ジャーナリスト佐藤和孝氏の、現代アフガニスタンレポート。筆者は、2012年にシリアで取材中に銃撃されて亡くなったジャパンプレス山本美香氏の同僚であり、山本美香記念財団の代表理事でもある。40年間の記者生活を、アフガニスタンボスニアコソボ・シリア・イラクチェチェンなどの戦場で過ごした。アフガニスタンについて筆者は、24歳で最初に訪れて以降、ソ連の侵攻から撤退、ムジャヒディン連立政権、タリバン台頭、アメリカ軍の空爆から侵攻、そして撤退までを現地で見てきた。筆者から見た、タリバンアルカイダ・ISの違いは、

 

タリバン 神学校で洗脳(に近い)教育を受けた者たち、基盤は国内

アルカイダ インターネットで国際的な情報発信や活動をする

・IS さらに活動域が広範になり、世界中から若者を勧誘するようになった

 

 だとある。

 

        

 

 ソ連の影響下で共産主義だったころには、女性がミニスカートで闊歩するなど、厳密なイスラム主義ではなかった。その統治も、後に米国が持ち込もうとした民主主義も、結局受け入れられることはなかった。筆者は、この地(さらには中東各地)は、100年前の日本に似ているという。厳しい刑罰、男性偏重社会、掟に縛られたムラ社会・・・ただこの表現は、誤解を生みそうだ。100年後、かの地は今の日本のようになると言いたいのかもしれないが、社会的発展を拒否するイスラム教ゆえ、それは不可能だ。

 

 最後に、戦場で命を落とすことがあっても、虜囚になって「自己責任論」を唱えられてもジャーナリストが戦地を目指すのは、自らが「抑止力」だからとある。戦場で起きていることを正しく市民に伝えることが、世界平和に寄与し日本を戦禍に巻き込まない道だという考え方だ。

 

 市民の知る権利と自己の危険のバランスをどうとるか?特に日本人記者だからと政府・自衛隊が救援しづらい現状では、慎重な取材が求められることについては、少し僕とは意見の相違があるようでした。