2022年発表の本書は、第一次・第二次安倍政権で内閣広報官、総理大臣補佐官を務めた長谷川榮一氏の「官邸録」。憲政史上最長となった政権を、主に広報畑から支えた人で、数々の「秘録」をお持ちのはず。しかし前書きの中に「内閣法で職務上知り得た秘密を秘匿する義務」があるので、踏み込まないからねとの言い訳が有り、ちょっとがっかり。
広報とは4つのAを大事にするとして、
・宛先(Addresses)は誰か
・関心(Attension)を惹けるか
・賛成(Agreement)を得られるか
・行動(Action)に結び付けてもらえるか
を今広報することの目的レベルまで含めて明確にしておかないといけないとある。例えば「COVID-19」対策なら、国民が感染状況や見通しを知って、政府の制限措置に理解を示し、行動自粛やハイジーン行動をしてくれるかは、広報戦術に大きな責任があるということ。
そのためには、政治家・官庁・自治体・メディア・産業界等の協力が必要だし、常々彼らとの連携を強化する活動をしておかないといけない。さらに海外との協力関係も、より重要な役割だ。
失敗も含む事例として、ゴーン事件、靖国参拝、慰安婦問題、年金機構情報漏洩事件、消費税増税、安全保障法制などが取り上げられている。個々の事案は分かるのだが、やはり「で、本当はどうだったんだよ」が全く書かれていない。「○○を広報した」とはあるのだが、民間は○○を額面通りに受け取れない。「××ならいいよ」「▼▼は困る」という口伝が裏であったはず。その点が知りたかった。
面白かったのは、公務員の成り手が減っていることについての持論。予算規模が膨らめば、それに伴う行政執行量が増す。予算関連のとりまとめ、申請許認可、白書の作成、国民への情報提供、戦略ビジョン策定などで大童になる。
結論は「民で出来ることは民で」でしたね。これは菅官房長官の教えでしょうか?