新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「自分は捕まらない」との意識

 1995年発表の本書は、ロサンゼルス検事局のマーヴィン・J・ウルフ検事と、ジャーナリストのキャスリン・マダーの共著になる、完全犯罪を狙った連中の始末記。その犯行の経緯や、犯人側が「自分は捕まらない」と思っていた犯罪が露見するプロセスが描かれている。本書で扱われている事件は10件。衝動的な犯行もあるが、多くは綿密な計画を立てて、逃げおおせると思っている。中には、完全犯罪の手口を思いついたので、やってみたというものもある。完全とは言えないまでも、

 

・死体が見つからなければ、有罪にできない

・海外で行方不明になれば、自国の官憲の手が及ばない

・緻密なアリバイ工作を行い、官憲に犯行を立証させない

・医師と結託して、他人の死体を使って死を偽装する

・殺し屋に妻を殺させ、その場で殺し屋を「妻の仇」として殺す

 

 というようなものだ。

 

        

 

 目立つのはやはり、夫の妻殺し。例えば、若く見目好い男が資産家の婦人を篭絡して結婚、遺産を狙うというケース。またロリコンの男が、20歳を越えた妻(!)に愛想をつかして、未成年の愛人に殺させる(未成年は罪が軽い)というものも。

 

 一見完全犯罪に見えるこれらのケースが、なぜ発覚し有罪判決を受けるかというと、多くは「同じ手口を繰り返す」から。ロリコン男などは、自分が15歳の頃から未成年の娘を誘惑し、20歳になると殺すという非道を行う。猟奇殺人鬼のケースでは、死体の一部(主に頭蓋骨)を保管したり、人肉を食べたゴミが出るなどして臭気を嗅ぎつけられている。また、思わぬハプニング(マーフィの法則?)で、緻密な計画が実行時典で崩れることもある。

 

 作者たちの序文によると、ごく一握りだが「貪欲・自己中心的ながら、表面を魅力的に取り繕うタイプ」がいるという。こいつらが危険なのだ。僕の周辺にそういうヤカラがいないことを祈りますよ。