新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

<驚きのスフレ>を巡る暗闘

 1986年発表の本書は、これまで2作を紹介したマイケル・ボンドの「パンプルムース&ポムフリットもの」。作者は童話「くまのパディントン」シリーズで有名だが、このようなユーモアミステリーも書いている。

 

 主人公は元パリ市警警部で、クビになってからはグルメガイド<ル・ギード>の覆面調査員をしているパンプルムース氏と愛犬のポムフリット。彼は食通ではあるが、最後の判断は愛犬に食べさせての反応で決めるという、いい加減な調査員だ。

 

 今回やってきたのは、スイスのローザンヌも近い湖畔の町。あるホテルのレストラン<ル・サンク・パルフェ>はオーナーシェフのアルベールと、4人の息子が営む有名店だ。長男がソース、次男が肉料理、三男が魚料理を担当し、末っ子のジャン=クロードがパティシエを努める。彼の作るデザート<驚きのスフレ>は、世界中の食通をうならせる。

 

        

 

 パンプルムース氏は調査の食事をしにきたのだが「犬お断り」の看板があり、ポムフリットは入れてもらえない。さらに楽しみにしていたスフレまでが食べられないと聞いて、彼は激怒する。愛犬の方も、入れてもらえないことに怒ってストライキ状態。

 

 そこに編集長から「ジャン=クロードが失踪したらしい。アラブの王様が彼のスフレが食べられないと、フランスへの石油輸出を止めると怒っている」と言ってきた。フランスのエネルギー危機は、パンプルムース氏が失踪したパティシエを見つけられるかどうかに掛かっているというのだ。突然国際紛争&スパイもどきの事件に巻き込まれた、彼と愛犬の運命は・・・。

 

 前2作同様、美味しそうな料理やお酒、さらにお色気シーンや下品なギャグが連続して出てくる。特に3本しかホテルに残っていない「45年物のシャトー・デュケム」の運命については、目を覆いたくなるような悲劇だ。

 

 英国風のユーモアというべきか、何と言うべきか?ちょっと悪ふざけが過ぎるように思いますが。