1990年発表の本書は、アガサ賞最優秀処女長編賞を獲ったキャサリン・ホール・ペイジのデビュー作。作者はニューイングランドの田舎町エイルフォードに住む牧師の妻フェイス・フェアチャイルドを探偵役にしたミステリーを書き続けているが、その第一作にあたる。
フェイスはマンハッタンで生まれ育ち、他の街は知らない。しかし牧師のトムと恋に落ち、子供までできてしまってトムの赴任地であるエイルフォードにやってきた。いわば米国のセントメアリミード村のようなところで、フェイスは戸惑うばかり。マンハッタンでは専業主婦などありえなかったのに、ここでは専業主婦が当たり前だ。
子育てこそしているもののヒマを持て余していた彼女は、鐘楼で刺殺されているシンディの死体を見つけ、鐘を鳴らした。これこそ彼女が「待ち望んでいた死体」で、フェイスは勝手に事件捜査を始める。
乳飲み子のベンジャミンを抱えながら事件関係者に事情を聴くなど、危なっかしいと警察署の署長やダン警部補は注意するが、フェイスは聞く耳を持たない。大男のダン警部補もニューヨーク(ただしブロンクス)出身で、話は合うのだが事件のこととなると別。夫のトムも説得するのだが、これもムダ。ただついにフェイス宛の脅迫状のようなものが送られてきて、さすがの彼女も実家(マンハッタン)に一時避難をする。しかし、その間にもう一人シンディの叔母が殺されて、フェイスは戻ることを決意する。
男にだらしなく、強請りめいたこともしていたシンディの素性から、独立戦争以降に地元で財を成した家の資産相続問題に事件は発展していく。フェイス周辺での事件議論に花を添えるのが、各種の料理。チーズ・ワイン・サラダ・旬のメニューからお茶受け、サンドイッチ・ピザまで豊富に出てくる。
東部の田舎の十年一日の生活の中に潜む悪意を描いた作品群だそうです。軽めの本格ミステリーというべきでしょうか。